【3月19日 AFP】米ジョージア州アトランタ(Atlanta)で白人の男がマッサージ店3軒を相次いで銃撃し、アジア系女性6人を含む8人を殺害した事件で警察は、容疑者の犯行動機は人種に基づいたものではなく、「セックス依存症」の「誘惑」排除が目的だったと供述していると発表した。

 いったい何を対象としたヘイトクライム(憎悪犯罪)なのだろうか。

 多くの米国人にとって、いつものように仕事をしていた罪のない女性たちが殺意の標的となったことは、人種差別やミソジニー(女性嫌悪)として単純に分類できる問題ではなかった。階級や米国の銃規制、容疑者が抱えているかもしれない精神疾患だけで判断できるものでもない。事件は、その全てを同時に内包している。

 このため、容疑者が人種に基づいた動機を否定していると強調した17日の警察発表は、動機は二つに一つでなければならず、もしセックス依存症が動機ならば、人種差別は動機ではないと示唆していると受け取られた。そして、ヘイト(憎悪)をどのように分類するかをめぐり、激しい怒りの声が巻き起こったのだった。

 警察の会見について、カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のキャサリン・セニーザ・チョイ(Catherine Ceniza Choy)教授(民族学)は、「アジア人やアジア系米国人の女性に対する『性的モノ化』を反映している」と指摘。「私は傷ついた」と述べた。

 1989年にキンバリー・クレンショー(Kimberle Crenshaw)教授が提唱した「インターセクショナリティー(交差性)」という言葉がある。偏見に関する問題が、どのようにして人種、性別、階級、その他の特性と同時に結びつくかを説明する考え方だ。

 女性もマイノリティーもそれぞれ差別の対象となりやすいが、マイノリティーの女性だと両方の属性に対する差別を同時に受けることになる。

 インターセクショナリティーの影響の大きさは、データに明確に表れている。アジア・太平洋諸国系の米国人(AAPI)に対する人種差別の撲滅運動「ストップAAPIヘイト(Stop AAPI Hate)」によると、全米で昨年報告されたアジア系米国人を対象とした人種差別のうち、女性を標的としたヘイト事件は男性の2.3倍多かった。