【4月24日 AFP】20年近くもの時を暗い土の下で過ごしてきた生き物が間もなく目覚め、何十億匹もの大群で耳をつんざく音を響かせ、米東海岸から中西部までの空を覆い、壁や床を埋め尽くそうとしている。

 ホラー映画の話ではない。大きな目に薄い膜のような羽を持った親指大のセミの話だ。17年に一度、地上に現れ、交尾し、産卵し、そして死ぬ。人々をぎょっとさせる彼らの到来は、定期的だがまれな現象で、壮観だ。

「まるでSFでした」。首都ワシントン郊外のメリーランド州ベセスダ(Bethesda)に暮らすメラニー・アッシャー(Melanie Asher)さんは、子どもだった1987年に遭遇したセミ大発生のことをはっきり覚えていると語った。

「床にセミの死骸がいっぱい転がっていました」とアッシャーさん。「虫は怖くないのですが、あれは異様でした。この世の光景ではないみたいで」

 今年のセミ大発生は、5月に首都ワシントンから中西部イリノイ州や南部ジョージア州までの広域で予想されている。一部地域では到来が1~2週間早まる可能性もある。

 ワシントン在住のメロディ・メリン(Melody Merin)さん(46)も、2004年の前回大発生時の体験をよく覚えている。逃げ場もないほど「そこらじゅうにセミが飛んでいて」、車を運転しているとフロントガラスにぶつかってきたという。「窓を開けては走れませんでした」

 数週間に及ぶセミ大発生の間、他にはどんな心構えをしておけばよいのだろうか。ある人は、飛んできたセミが髪の毛に絡まると指摘した。歩くたびに足元で無数のセミの死骸が立てるカサカサという音を思い出した人もいる。

 今回が3回目の体験という年金生活者のピーター・ピアート(Peter Peart)さん(66)は、耳障りな騒音を挙げた。「不協和音ですよ」

「やかましくてノンストップ。ひっきりなしです」。ただ、「そのうち慣れます。ただの背景雑音になる」とも付け加えた。ピアートさんは、セミ大発生という「驚くべき」現象そのものを面白がっていると認め、今回初体験となる人々が「どんな反応を見せるか、楽しみです」と話した。