【3月18日 AFP】バリケードが燃やされ、煙が立ち上る中、丸腰でクーデターに抗議するデモ隊に向けて治安部隊が発砲を繰り返す──軍事政権が戒厳令を敷いたミャンマー最大都市ヤンゴンの工業地区は17日、戦場と化した。

 7週間前に起きたクーデターに対する抗議デモの最前線となっているラインタヤ(Hlaing Tharyar)郡区からは、心に傷を負った住民らが逃げ出している。

 デモはミャンマー全土で続いている。軍事政権は重装備の鎮圧部隊を増強しており、現地の人権監視団体「政治囚支援協会(AAPP)」によれば、各地で200人以上のデモ参加者が殺害された。

 軍事政権は14日、ラインタヤ郡区などヤンゴンの一部地域に戒厳令を発令。AAPPによれば、この日だけで死者は70人を超え、その大半は同郡区での死者だった。

 ラインタヤ郡区の住民の多くは地方からの出稼ぎ労働者だ。事態を受け、トラックやバイクに家財道具を積み、家族と共に脱出し、故郷へ帰る人が相次いでいる。

 残った住民からは、戦争さながらの光景が報告されている。「夜通し銃声が鳴り響いて、眠れなかった」とある住民はAFPに語った。人々は、通りを歩くだけでも治安部隊に狙撃されるのではないかと恐れているという。

 医学生の住民は、区内の要所に軍や警察が多数展開し、「車やバイクを検問し、道行く人の携帯電話までチェックしている」と証言した。「政治や市民的不服従運動に関連しているとみなされれば、たちまち逮捕される」

 ヘルメットとガスマスクを着用し、盾を手にしたデモ強硬派は16日夜、区内の主要道路に通じる橋に陣取り、タイヤや木材、土のう、竹ざおなどでバリケードを築いた。一部のバリケードは燃やされ、閑散とした通りに黒煙が立ち込めた。

 治安部隊に火炎瓶を投げつけるデモ参加者もいたが、手作りの盾に身を隠す姿は無防備に見える。近隣地区の住宅地で撮影された動画をAFPは確認したが、約15秒にわたり絶え間なく銃声が鳴り響いていた。

 ラインタヤ郡区はここ数日で「市街戦場」となったと、国際人権連盟(FIDH)のデビー・ストサード(Debbie Stothard)副事務局長はAFPに話した。「この数日間で大勢が逮捕されたと聞いたが、現地で何が起きているのか、情報を得るのがとても難しくなっている」

 逮捕や暴力的な鎮圧に関する情報はソーシャルメディアを介して断片的に外部に伝えられているが、軍事政権がデータ通信に制限をかけたため、滞っている。多くのミャンマー国民は15日以降、携帯電話からインターネットに接続できない状態が続いている。(c)AFP