■高齢のアジア系市民の外出に付き添うボランティアも

 カリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校(CSU San Bernardino)の「憎悪・過激主義研究センター(Center for the Study of Hate and Extremism)」は、地元警察のデータを基に、全米16都市で、犯罪性があり、民族・人種的な偏見の証拠がある事例を取り上げた。その調査結果によると、アジア系が標的のヘイトクライムは、おととし49件だったのに対し、昨年は122件と、3倍近くに増えている。ヘイトクライムの総数が7%減少したこととは対照的だ。

 バイデン大統領は就任直後の1月26日、コロナ禍でのアジア・太平洋諸国系の米国人(AAPI)に対する人種差別を糾弾する大統領令に署名した。

 米国の各州も後に続いた。カリフォルニア州とニューヨーク州はアジア系への差別に立ち向かう措置の予算を拡充し、ニューヨークでは関連法案が提出された。

 しかし、リムさんは「すぐにどうにかなることはないと思う」と言う。

 そこで、リムさんをはじめ、地域の一人ひとりが問題に取り組み始めた。オンラインでのキャンペーン、「ストップAAPIヘイト(Stop AAPI Hate、AAPIへのヘイトを止めよう)」などの団体向けの資金集め、「#NotYourModelMinority(模範的マイノリティーじゃない)」などのハッシュタグを通じた啓蒙(けいもう)活動などだ。

 カリフォルニア州全域では、高齢のアジア系市民の外出に付き添うボランティアグループの活動が始まっている。

 ジミー・ボウンフェンスィ(Jimmy Bounphensy)さんも、そうしたボランティアグループを設立。暴行や強奪が続いたカリフォルニア州オークランド(Oakland)のチャイナタウンかいわいをパトロールしている。

「一人でも助けられたら、うれしい」と、ボウンフェンスィさんはパトロール中にAFPに語った。「私や仲間の存在によって、私たちが何としてでも地元を守り、みんなに何事もなく家に帰ってもらおうと思っていることを(住民たちに)知ってもらいたい」