■「条件付き」で米国に受け入れられてきたアジア人

 ヘイトクライムの絶対数は比較的少ないままだが、表沙汰にならないケースは多いはず、と語るのは中国系米国人の人権団体「中国人権益促進会(Chinese for Affirmative ActionCAA)」の代表の一人、シンシア・チョイ(Cynthia Choi)氏。CAAは他の団体と共に「ストップAAPIヘイト」を創設した。

「ストップAAPIヘイト」によると、アジア系米国人を標的にした人種差別の事例についてオンラインで報告を受けた件数は、昨年の3月から12月にかけて全米で2800件以上に上った。

「これほど増えたのは、新型コロナウイルスが流行したのは中国のせいだと非難する傾向と関連している」とチョイ氏はAFPに指摘し、「トランプ氏や一部の議員らによる人種差別的な発言も追い打ちをかけた」と続けた。

 ヘイトクライムの急増によって、人々は米国に根強く残る反アジア人感情について思いを致すようになっていると指摘するのは、偏見や人種差別と闘う教育者で、文筆家のリズ・クラインロック(Liz Kleinrock)氏だ。過去の事例としては、1800年代後半の中国人労働者に対する集団リンチ、中国人排斥法、第2次世界大戦(World War II)中の日系人の強制収容などがある。

 一方で、アジア・太平洋諸国系の米国人に押し付けられた固定観念の一つに、「模範的なマイノリティー」神話がある。多種多様なアジア系移民を画一的に捉え、「白人に近い存在」としてくくるこの考え方により、変化に富んだ歴史が消し去られ、アジア系社会は人種差別とは無縁という幻想を抱かせると活動家らは指摘する。その結果、アジア系市民が人種問題で考慮の対象から外れることも多くなる。

 アジア人は「条件付き」で米国に受け入れられてきた、と韓国系米国人のクラインロック氏は言う。「アジア人が尊敬され、重宝されるのは、目立たずおとなしくしている時」と「(米国人の主流派に)同調している時」だけだと指摘し、こう続けた。「でも、そういう時代は終わった」 (c)AFP/Tori OTTEN with Susana MENDOZA in Oakland