【3月13日 AFP】英ロンドン警視庁(Metropolitan Police Service)は12日、ロンドン郊外の森林で見つかった遺体が行方不明になっていた女性と確認し、同庁所属の警察官の男を誘拐および殺人罪で訴追した。警察官が逮捕された事態を受け、警視庁や市民の間では動揺が広がっている。

 遺体で発見されたのはロンドン南部に住むマーケティング会社役員のサラ・エバラード(Sarah Everard)さん(33)で、帰宅中だった3日夜から行方が分からなくなっていた。

 エバラードさんを誘拐・殺害した容疑で9日に逮捕されたのは、ロンドン警視庁のエリート部門である外交保護部に所属するウェイン・カウゼンズ(Wayne Couzens)容疑者(48)。逮捕翌日の10日、同容疑者が住むイングランド南東部ケント(Kent)州アシュフォード(Ashford)の森林でエバラードさんの遺体が発見された。

 ロンドン警視庁は「異例の出来事について明確にしておくため」として、カウゼンズ容疑者の雇用情報を公表した。それによると同容疑者は2018年9月に入庁後、ロンドン南東部の一部を担当する対応チームに配属され、昨年2月に武装部隊である議会・外交保護部に異動。主な任務は大使館などのパトロールだったという。

 当局によると、カウゼンズ容疑者は12日に頭部のけがで入院しており、その前日にも「独房に一人でいる」時に同じようなけがをし、一時入院していた。エバラードさんの行方が分からなくなる数日前には、ファストフード店で局部を2回露出したとの公然わいせつ罪で訴追されており、これらの件にロンドン警視庁が適切に対処したかどうかについて独立調査が行われるという。

 カウゼンズ容疑者は、13日にウェストミンスター治安判事裁判所(Westminster Magistrates' Court)に出廷する予定。

 逮捕されたのが警官だったこと、また女性が犯罪に巻き込まれるケースが多発している事態をめぐり、英国内では怒りが巻き起こっている。

 ジェス・フィリップス(Jess Phillips)議員は11日、昨年殺害された118人の女性と少女の名前を議場で読み上げた。

 フィリップス氏は「女性たちが犠牲になることを、私たちはありふれた出来事のように受け入れてしまっている」と述べ、「女性が殺されることがまれなことではなく、当たり前のことになっている」と非難した。(c)AFP