【3月13日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は12日、中国におけるイスラム系少数民族ウイグル人の扱いをめぐり2022年北京冬季五輪のボイコット論が出ていることについて、アスリートが犠牲になるだけだと訴えた。

【関連記事】元国連大使も米の北京五輪ボイコット主張 共和党の要求高まる

 中国政府は現在、同国北西部にある新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)でウイグル人などの少数民族に対してジェノサイド(大量虐殺)が行われているとして、人権団体や一部の国の政府から高まる批判の声にさらされている。

 人権団体は、同自治区ではウイグル人をはじめとするイスラム系少数民族を中心に少なくとも100万人が施設に収容されており、そこでは女性の不妊手術や強制労働が行われているとみている。中国政府は以前、強制収容施設の存在を否定していたが、後になってこの施設はイスラム過激主義への傾倒阻止を目的とした職業訓練センターだと弁明した。

 この問題をめぐっては先日、アルペンスキー女子のスター選手で北京冬季五輪では注目選手の一人になるとみられているミカエラ・シフリン(Mikaela Shiffrin、米国)が、一部の五輪開催地でアスリートが仕事とモラルの間で選択を迫られる人権侵害に直面している「論理的な証拠」があることに言及していた。

 しかしバッハ会長は、IOCの政治的中立を強調し、これは各国政府が責任を果たすべき問題であるとの見解を示した上で、ボイコットに反論。旧ソ連のアフガニスタン侵攻を理由に1980年のモスクワ五輪がボイコットされたときのことを引き合いに出し、「人々は歴史から学ぶべきだ。五輪をボイコットしても何も達成できていない」と述べた。

 当時、旧西ドイツのアスリート代表としてモスクワ五輪のボイコットに反対の声を上げたものの、フェンシング男子団体連覇が達成できなかった経験を持つ同会長は、「ソ連軍が撤退したのは1989年だったので本当に何の役にも立たず、自国の選手が犠牲になっただけで、その報復に(1984年の)ロサンゼルス五輪がボイコットされた」と話し、「アスリートが犠牲を払うことになる」と訴えた。(c)AFP/Coralie FEBVRE