【3月11日 AFP】一見これといった特徴はない、織り目の粗いスカーフのようなこの生地は、情報を伝えることができる。身に着けたり、畳んだり、洗ったりできる上、ディスプレーとして完全に機能する。メッセージや画像を素早く表示するだけでなく、キーボードを組み合わせた使用も可能だ。

 中国・上海にある復旦大学(Fudan University)高分子エンジニアリング学部の彭慧勝(Huisheng Peng)教授が率いるチームは10日、英科学誌ネイチャー(Nature)に「ディスプレー・テキスタイル」の研究成果を発表した。

 ウエアラブル電子機器の進歩は著しく、すでに超薄型ディスプレーなどの機能を搭載した衣類が登場している。しかしそうした製品は、薄いフィルム状の発光素子を布地に貼ったり織り込んだりして作られているため、通気性や柔軟性に乏しい、壊れやすいといった問題があり、また決められたパターンしか表示できないことが多い。

 彭教授のチームは約10年間にわたる試行錯誤の末、織布の縦糸と横糸が交わる箇所に、極小の光の点を作り出すことにした。

 このような極小の光の点を作るには、木綿などの繊維と一緒に織ることが可能な発光性の縦糸と導電性の横糸が必要だった。そこでさまざまな組み合わせをテストし、発光物質でコーティングした銀めっき繊維の縦糸と、ゲルの一種から紡いだ導電性の横糸にたどり着いた。

 二つの素材は木綿と一緒に織り込まれ、長さ6メートル、幅25センチの生地ができた。電流を加えると、銀めっき繊維の層と導電性ゲル繊維の接触部分が発光する。(c)AFP/Sara HUSSEIN