【4月16日 AFP】東南アジアの島国シンガポールでは、数千のパネルが海に広がり、光り輝いている。国土の狭い都市国家は、水に浮かぶ太陽光発電ファームの建設を推進している。

 裕福な金融センターのシンガポールは世界最小国の一つだが、1人当たりの二酸化炭素(CO2)排出量はアジアでも最悪のレベルだ。

 政府は状況改善に取り組んでいるが、水力発電に適した川や風力発電に十分な風がなく、再生可能エネルギーの創出は難しい。

 そこで赤道直下のシンガポールは、太陽光発電に目を向けた。陸地面積が米ロサンゼルス市の半分しかない中、沖合や貯水池にプラントを設置する選択をした。

「建物の屋上や希少な土地は、使い果たしてしまっている。大きな見込みがあるのは、水域なんです」と語るのは、政府系コングロマリット(複合企業)、セムコープ・インダストリーズ(Sembcorp Industries)の太陽光担当上席副社長ジェン・タン(Jen Tan)氏。太陽光プロジェクトの一つを手掛けている。

 シンガポールは、気候変動による海面水位の上昇に脅かされる島国として、炭素排出削減の緊急性を痛感している。しかし、これまでは環境問題への取り組みが十分でないと批判もされてきた。

 そうした中、政府は2月に「グリーン計画(Green Plan)」を発表した。植樹の推進や埋め立てごみの削減、電気自動車(EV)用充電スタンドの設置など広範な対策が盛り込まれている。

 その一つが、2025年までに太陽光エネルギーの利用を現在の4倍、国の電力需要の2%前後とし、さらに2030年までに3%に伸ばす計画だ。35万世帯の年間利用に相当する。太陽光パネルはすでに屋上や地上、水上に設置されている。

■海は「新たな開拓地」

 シンガポール島とマレーシアを隔てるジョホール海峡(Johor Strait)には、新設の太陽光ファームが広がっている。

 海底にアンカーで固定された1万3000枚のパネルは、住宅1400戸の年間使用量に相当する5メガワットの電力を供給できる。

「海は、太陽光パネルを設置できる新たな開拓地だ」。1月に同プロジェクトを竣工(しゅんこう)したシンガポールの太陽電池企業サンシープ・グループ(Sunseap Group)の副社長ショーン・タン(Shawn Tan)氏はそう語った。「シンガポールや近隣諸国で、これが海上ファームの先例となってほしい」

 テンゲ貯水池(Tengeh Reservoir)で進行中のプロジェクトはさらに規模が大きい。今年中に完成予定の太陽光ファームのパネルは、12万2000枚。東南アジア最大級で、サッカーコート45面分の広さだ。

 このプロジェクトはセムコープと公益事業庁が進め、シンガポールの水処理施設に必要な電力を供給する。これにより削減される炭素排出量は、走行車7000台分に匹敵する。

 太陽光パネルは世界最大の生産国である中国から輸入。コンクリートブロックで、貯水池の水底に固定される。