【3月11日 AFP】フランスで昨年発生した教師サミュエル・パティ(Samuel Paty)さんの斬首事件で、遺族の代理人は9日、うそがソーシャルメディアで拡散し、パティさんの殺害を招いたことへの怒りをあらわにした。

 首都パリ近郊の中学校に勤めていたパティさんは昨年10月、表現の自由を扱った授業でイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を生徒らに見せた。その後、ロシア・チェチェン(Chechnya)共和国出身の10代の男に殺害された。

 事件に先立ち、実際にはパティさんの授業に出席していなかった女子生徒(13)が、パティさんが風刺画を見せる間、イスラム教徒の生徒らに教室外への退出を求めたと証言。女子生徒は後に、これがうそだったことを警察に認めた。

 女子生徒の父親はこの虚偽証言に基づき、複数の扇動的な動画をフェイスブック(Facebook)に投稿。父親は事件に絡んで予審対象となっている。

 女子生徒は、自分は他の生徒らの代弁者なのだという思い込みや、父親にいいところを見せたいという気持ちがあったと語っている。

 パティさんの遺族の代理人のビルジニー・ルロワ(Virginie Le Roy)弁護士は、女子生徒の話には「懐疑的」だと述べ、「いったい何の代弁者だというのか? うその、実際にありもしなかったことの代弁者なのか? 私はこの説明には納得していないし、真実が深刻かつ悲劇的である以上、むしろ怒りを覚える」と語った。

 パティさんの事件はフランス国民を震撼(しんかん)させ、表現の自由や、同国内に多いイスラム教徒の社会統合、ソーシャルメディアを通じた憎悪扇動をめぐる議論を再燃させた。(c)AFP