【4月9日 AFP】初代ローマ皇帝アウグストゥス(Augustus)の巨大な霊廟(れいびょう)が数百年ぶりに修復され、イタリアの首都ローマで先月から一般公開されている。

 テベレ(Tiber)川岸にそびえるこの霊廟は、紀元前28~23年、アウグストゥス帝のために建てられた。アウグストゥス帝は40年に及ぶ在位中にローマ帝国を築き上げた人物で、古代ローマの将軍・政治家ユリウス・カエサル(Julius Caesar)は大おじに当たる。

 円柱状の基礎部分の直径は約90メートル。かつては上部にイトスギの木がずらりと植えられ、最上部にはアウグストゥス帝の銅像が立ち、廟全体の高さは45メートルほどあった。

 アウグストゥス帝と妻リウィア(Livia)が埋葬されている中心部の部屋は、当初は表面が大理石とトラバーチン(石灰岩の一種)に覆われており、その周囲には一族を埋葬する墓室も用意されていた。

 ローマ帝国が滅亡すると、アウグストゥス廟は墓としての役割を失い、他の古代ローマ遺跡と同じく、用途がさまざまに変化していった。中世には要塞(ようさい)となり、ルネサンス時代には庭園や闘牛場に。1900年代初頭には、この上にコンサートホールが建てられた。

 1930年代になると、ファシストの独裁者ベニト・ムソリーニ(Benito Mussolini)が再び霊廟として一般公開する。ムソリーニは、自身の政権についてローマ帝国の後継というイメージを打ち出すことをもくろんでいた。

 その後2007年に閉鎖され、修復工事が始まるが、工事は現在も完了しておらず、現場にはクレーンがそそり立ち、多くの作業員がせわしなく働いている。

 廟の大きさから考えると、アウグストゥス帝が着想を得たのは、エジプトのアレクサンドリア(Alexandria)にあるアレクサンダー大王(Alexander the Great)の墓か、現在のトルコに当たるハリカルナッソス(Halicarnassus)に建てられ、「古代世界の七不思議」の一つに数えられていた霊廟だったのではないかと専門家らはみている。

 入場券はオンラインでのみ購入可能で、すでに6月末分まで完売している。(c)AFP/Gildas LE ROUX