■1枚のじゅうたんに要する期間は半年から2年

 取引が成立すれば、じゅうたんハンターはカーペットを持ち帰り、洗浄して、屋上で何か月も干す。太陽の光でじゅうたんの色を引き出すためだ。その後、首都カブールなどの都市に持ち込み、販売前に細かい修繕を行う。

 1枚のじゅうたんを仕上げるのに要する期間は、6か月から2年ほど。一流のじゅうたん商のショールームに飾られれば、国際市場で数千ドル(数十万円)の値が付くこともある。

 カブールで遊牧民のじゅうたんを収集している第一人者のアブドゥル・ワハブ(Abdul Wahab)さんは、アラクルさんのようなじゅうたんハンターの人脈に「99.9%頼って」商品を買い集めてきたと言う。「自分の持っているじゅうたんが好きですね。1枚ずつ買います。売るためだけではないですよ」

■大量生産される安価なじゅうたん

 しかし、紛争が数十年に及び、じゅうたんの作り手が住まいを追われ、さらに都市化が進んだことにより、この商売も様変わりしている。

 カブールのじゅうたんバザールの業者らによると、遊牧民の中には、定住し、家族でじゅうたんを作ってきた織り機を手放す人も増えてきた。

 輸入品の羊毛や合成染料の使用とともに、商業的なじゅうたん工場も急激に増えたため、市場には大量生産された安価なじゅうたんがあふれている。

「羊毛はベルギー産。染料はまた別の国から」で、「アフガニスタン産のものは何もない」とワハブさんは嘆く。偽物や安価な模造品がはびこり、なおさら高価なアンティークのじゅうたんは売れにくくなったと言う。

 薬品処理、茶による洗浄、時には車で踏みつけて、アンティークに見せ掛けた風合いを出し、値をつり上げる業者もいる。

 じゅうたんの真の価値を見極めるには、長年培った眼力と注意深く手触りを確かめることが必要だと、経験豊富な業者は指摘する。

「染料、デザイン、状態、年数、形…すべて含めて品物の価値が決まる」と語るのは、カブールにある「ヘラート・カーペッツ(Herat Carpets)」のオーナー、ワヒド・アブドラ(Wahid Abdullah)さんだ。