【3月12日 東方新報】中国で今月1日に発表された「国民メンタルヘルスリポート2019-2020」で子どもの睡眠不足が深刻化していることが浮き彫りになった。学校の宿題が負担となっていることや、子どもがスマートフォンを利用していることが影響している。

 リポートによると、小学生の平均睡眠時間は8.7時間で、95.5%は10時間未満だった。中学生は平均7.6時間で、90.8%は9時間未満。高校生は平均7.2時間で、84.1%は8時間未満だった。2009年の調査と比べ、小学生と中学生は平日の睡眠時間が約40分間短くなり、高校1~2年も10~20分短くなっている。

 中国では受験戦争が日本以上に加熱しており、小学校から「宿題漬け」が常態化している。最近まで続いた一人っ子政策の影響で、保護者はたった一人のかわいい子どもを評判の良い公立学校に通わせようと、その校区内にわざわざ引っ越しをすることも珍しくない。学校のランクを落としたくない教師は子どもに多くの宿題を与え、親もそれを容認する傾向が強い。こうして子どもの睡眠時間が削られていく。

 また、最近はスマートフォンを持つ子どもが増えた。親が勉強を強く求める家庭でなくとも、子どもが深夜までスマホ遊びに夢中になるケースも問題になっている。

 リポートに先立つ2月、陳宝生(Chen Baosheng)教育部長は「過度の宿題を出さない」など5項目の方針を表明した。宿題については「小学校では必要な教育は校内で終わらせ、家庭での宿題を出してはならない。中学、高校も要綱などを超えた宿題は出さない」と指示。また、「スマートフォンを学校に持ち込まず、管理を徹底すること」「学校と保護者が連携し、子どもの睡眠時間を確保すること」「子どもの心身の健康を管理すること」などを求めた。

 ただ、こうした指示はこれが初めてではない。教育部は2013年に「小学生の負担軽減10原則」を発表。「小学生には宿題を課さない」とし、美術館や図書館、文化センターなどで広く教養を身に付ける学習方法を提唱している。2018年にも「児童・生徒の負担軽減措置」という通達を出し、学年ごとに宿題の上限時間などを定めている。

 しかし、何度も通達を出しているということは、それが浸透していないという現実を表している。「有名大学に入るかどうかで人生が決まる」といわれる厳しい受験戦争の現実がある限り、「宿題漬け」も簡単に変えることはできない。子どもがスマホに熱中する問題も各国共通だ。いずれも学校の宿題と違い、明確な「答え」のない問題といえる。(c)東方新報/AFPBB News