【3月10日 AFP】「前は仕事モード、後ろはパーティー仕様」──あまりにダサくて、長年にわたりほとんど罪とさえ言われてきた髪形「マレット」が、まさかの復活を果たしている。

 リアーナ(Rihanna)さんやマイリー・サイラス(Miley Cyrus)さんといった米ポップ歌手を筆頭に、世界のテレビや街角を席巻しているのが、前から見るとショート、後ろから見るとロングのヘアスタイル、マレットだ。

「私のアイドルはずっとデヴィッド・ボウイ(David Bowie)とダイアナ妃(Princess Diana)で、2人の子どもみたいに見えたらいいなと思ったのが最初だった」と、英ブライトン(Brighton)在住のオーストラリア人、シャロン・ダニエルズ(Sharon Daniels)さん(26)は話す。

 2年前、ブライトンに来たとき、街で同じ髪形をしているのはもう1人しかいなかった。なぜ知っているかというと、その男性の写真をみんながダニエルズさんに送ってきたからだ。

 だが、今やどこもかしこもマレットだらけだ。

 地球が回っているように、ファッションの流行も回っている。だが、マレットだけは永遠に葬り去られたと多くの人が思っていた。

 ベテラン理髪師の団体「ブリティッシュ・マスター・バーバー・アライアンス(British Master Barbers Alliance)」のトニー・コープランド(Tony Copeland)氏は、マレットの再流行を「死者がよみがえった」と話す。

 このままいけば、次回の欧州最大のマレット・フェスティバル(Festival de la Coupe Mulet)では、大接戦が繰り広げられそうだ。だが、2019年にベルギーで開催された前回大会の優勝者、ゴティエ・イスタン(Gauthier Istin)さんはタイトル防衛に自信をみせる。

 仏西部ブルターニュ(Brittany)で農業に従事するイスタンさんは、今年6月に中部で開催予定のマレット・フェスティバルには、歩いて行こうと思っている。

 イスタンさんによると、マレットの歴史は、肩パッドやジャケットの袖のロールアップがはやった1980年代よりも、はるか昔にさかのぼるという。

 実際、「ヒストリー・チャンネル(History Channel)」によると、文学では古代ギリシャ時代に初登場している。ホメロス(Homer)の叙事詩「イリアス(Iliad)」に、「前髪を刈り上げ、後ろを長く伸ばしている」やり兵の部隊の記述がある。

 しかし、この髪形は数世紀もの間、呼び名のないままだった。オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)によると、記録に残る限りでは、1994年に米ヒップホップ・グループ、ビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)がシングル「マレットヘッド(Mullethead)」で使用したのが初めてだという。(c)AFP/Eric RANDOLPH