【3月12日 AFP】熱烈なサッカーファンはチャントを飛ばしたり叫んだり、応援したりすることがチームの勝利につながると信じてやまないが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって試合が無観客で行われる中、ホームチームの勝利数が減っている南米に関していえばそれは正しいのかもしれない。

 地球上で最もサッカーに熱狂的といわれるブラジル、アルゼンチン、ウルグアイの1部リーグにおける直近3シーズンの結果をAFPが分析した結果、観客の入場が禁止された後ではホームチームの成績が悪くなっていることが分かった。

 サッカーが生活の中心となっているブラジルのカンピオナート・ブラジレイロ(全国選手権)1部におけるホームチームの成績は、2018年が202勝68敗110分け、2019年が184勝98敗98分けだったのに対し、史上初の無観客開催となった2020年は勝利数が著しく減り、171勝101敗108分けという結果だった。

 全国選手権で連覇を果たしたばかりのフラメンゴ(Flamengo)も、ホームで圧倒的な成績を残したわけではなかった。

 同国サッカーの聖地として知られるリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)のマラカナン・スタジアム(Maracana Stadium)を本拠地とするフラメンゴは、計19試合のホームゲームで2018年に44ポイントを、2019年に53ポイントを記録していたが、昨シーズンは37ポイントしか挙げることができなかった。

 これは偶然の一致なのだろうか? コロンビアにある人間行動研究所(Human Behavior Research Institute)の代表を務めるエドウィン・エラソ(Edwin Herazo)氏は、そうではないと考えている。

 同氏は「観客の前でプレーすることの精神的な支えや、気持ちの上での恩恵がないことが、パフォーマンスに関するモチベーションを高める要素に影響を与えているのではないか」と述べた。

 アルゼンチンではスタジアムが押しつぶされるほど満員になることが多く、ファンが大声で感情をあらわにするが、ボカ・ジュニアーズ(Boca Juniors)の本拠地ラ・ボンボネーラ(La Bombonera Stadium)といった象徴的なスタジアムでも、ファンがいないことで選手たちを奮起させる力はどれほどか失われたようだ。

 同国1部リーグにおけるホームチームの勝率は2018年が44.4パーセント、2019年が43.4パーセントだったのに対し、昨年は42.4パーセントだった。

 また、家族そろって何度もスタジアムに足を運び、CAペニャロール(CA Penarol)かナシオナル・モンテビデオ(Nacional Montevideo)のどちらかを大声で応援するウルグアイ1部リーグでも、レギュラーシーズンにおけるホームチームの勝率は2018年の39.9パーセント、2019年の44.8パーセントから、今シーズンは36.2パーセントに下がっている。

 ブラジル代表FWで、イングランド・プレミアリーグのエバートン(Everton)に所属するリシャルリソン(Richarlison)は、観客がいない中でのプレーが「戦術や技術面に関して」影響を与えることは一切ないものの、「ファンからのプレッシャーに直面することがないため、アウェーチームはより気楽に臨めている」のかもしれないと話した。

 リシャルリソンがプレーするプレミアリーグでも、南米に近い傾向が出ているようだ。

 今季第26節終了時点のアウェーチームの勝利数は、2018-19シーズンが89、2019-20シーズンが83だったのに対し、今季は101となっている。(c)AFP/Rodrigo ALMONACID