【3月8日 People’s Daily】「ほら、今度は茶葉の注文が入ったよ」。中国広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)西北部の山あいに位置する融水ミャオ族自治県(Rongshui Miao Autonomous County)で、eコマース(電子商取引)公共サービスセンターのスタッフ龍運桂(Long Yungui)さんは満面の笑みを浮かべた。シイタケや紅茶、牛肉の塩漬け、もち米…。地元の特産品はセンター1階の店舗だけでなく、eコマースでの売れ行きが好調だ。実店舗とオンラインの両方で業績を挙げている。

 融水ミャオ族自治県はかつて国指定の貧困県だった。自然に恵まれ農産物も豊富だが、交通の便が悪く販路が拡大できなかった。県はこの状況を改善するため、eコマース事業に力を入れ始めた。この数年で10億元(約160億円)を投入。農村の道路を修復して物流ルートを確保し、100以上の村にブロードバンドを整備し、宅配便の会社を約20社設立した。2019年11月には120か所にeコマースのサービス拠点をつくり、貧困地域の60%をカバーした。

「eコマースにより新たな販路が生まれ、高額の取引も増え、貧困世帯に大きな恵みをもたらした」。eコマース公共サービスセンターの蒙可暢(Meng Kechang)主任はそう振り返る。2020年6月までにeコマース事業は8100の貧困世帯の暮らしを助け、世帯の平均年収を1000元(約1万6700円)増やした。2020年末、融水ミャオ族自治県は貧困県から除外された。

 融水ミャオ族自治県の取り組みは、全国でeコマース事業が貧困を解消させている縮図だ。2014年に発表された823の国指定貧困県は2020年末にすべて貧困を解消し、eコマース事業が大いに貢献した。農村は特産品をeコマースで販売し、その収入で都市部から日用品を購入し、生活の質を高めていった。

 2020年、832の貧困県のeコマースの売り上げは前年比26%増の3014.5億元(約5兆370億円)に上った。特に農産物の売り上げは伸びており、eコマース向けに農産物を育てる農家が増えている。

「インターネット+eコマース」戦略は農村の未来を切り開いており、若者が新たな主力となっている。四川省(Sichuan)蒲江県(Pujiang)に住む26歳の楊添財(Yang Tiancai)さんはリンゴやキウイなどをeコマースで販売し、年商1億元(約16億円)を達成。多くの地元農家を貧困から脱却させた。湖北省(Hubei)随県の呉師(Wu Shi)さん、曹方(Cao Fang)さん夫妻は特産品のシイタケを数千万元売り上げた。ハスの実を販売している湖南省(Hunan)湘潭市(Xiangtan)の青年、譚宇翔(Tan Yuxiang)さんは今年、売り上げ1億元突破が目標だ。

 2020年は新型コロナウイルスの影響を受け、帰省できなくなった労働者や大学生がeコマースで起業に乗り出した。2020年末段階で国家級貧困県のネットビジネスは前年比13.7%増の306.5万件に達している。(c)People’s Daily/AFPBB News