【3月4日 AFP】(更新)韓国で軍に入隊後に性別適合手術を受け、除隊処分を受けた20代のトランスジェンダーの元兵士、ピョン・ヒス(Byun Hee-soo)さんが自宅で遺体で発見された。聯合(Yonhap)ニュースが3日、報じた。

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 聯合ニュースによると、メンタルヘルスのカウンセラーが、2月28日以降ピョンさんと連絡が取れていないと通報していた。警察が捜査を開始しているという。

 報道によると、遺書は見つかっていないが自殺として捜査が行われている。聯合ニュースは当局筋の情報として、ピョンさんが3か月前に自殺未遂をしていたと伝えた。

 ピョンさんは2017年に志願して入隊。2019年にタイで性別適合手術を受けた。国防省は、男性器がなくなったことを精神的または身体的な障害と判断し、軍の審査委員会が昨年1月に除隊処分を決定。

 ピョンさんは同月、当初伏せていた実名を公表して軍服で記者会見に臨んだ。集まった報道陣を前に敬礼し、「私は大韓民国の兵士です」と涙ながらに語り、軍人になるのが子どもの頃からの夢だったと明かした。

 さらに、「私もこの国を守る優秀な兵士の一人になれるのだということをみんなに証明したい」と涙をこらえながら話し、「どうか私にそのチャンスをください」と訴えた。

 国際人権団体はこれまでも、韓国の同性愛の兵士に対する処遇に懸念を示してきた。韓国では、一般市民による同性愛行為は犯罪とは見なされないものの、兵士は禁じられており、発覚した場合は2年以下の禁錮刑に処される可能性がある。

 ピョンさんの死を受け、差別禁止法案の可決を求める声が高まっている。韓国第2位のポータルサイト「ダウム(Daum)」には、「彼女の死の責任は、韓国社会全体にある」とのメッセージが投稿された。「トランスジェンダーだという理由で彼女をあざ笑い、悪意に満ちたコメントをネットに投稿した人たちは、自分がしたことを反省してほしい」と訴えるコメントもあった。

 韓国では昨年、性別・人種・年齢・性的指向・障害・宗教・犯罪歴・容姿・学歴などに基づく差別を禁じる新たな法案が国会に提出された。同様の法案は、過去14年で10回以上国会に提出されたが、保守的な教会や市民団体の強い反発で、いずれも不成立に終わっている。(c)AFP