【3月6日 AFP】キューバの桃源郷といわれる美しい町ビニャーレス(Vinales)で1年前、カルロス・ミジョ(Carlos Millo)さんは民宿を営んでいた。

 だがコロナ禍で観光客の足が遠のき、ミジョさんや町の人々は昔ながらの自給自足生活に戻らざるを得なかった。「私たちは再び土地を耕すしかありませんでした」。そうAFPに語ったミジョさんは、自宅の後ろの50平方メートルの庭でフダンソウやトマト、マメ類などを育て始めている。

 ビニャーレスの人口は約2万8000人。コロナ禍以前、町民の8割は直接的または間接的に観光業から収入を得ていた。町は「モゴーテ」と呼ばれる巨大な石灰岩の岩山に囲まれた肥沃(ひよく)な渓谷にある。

 町の名前の由来となったビニャーレス渓谷(Vinales Valley)は1999年、「独特なカルスト地形と、そこで数世紀にわたり続いている(主にタバコ栽培における)伝統農法」が評価され、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)に登録された。ユネスコによると、建築や工芸品、音楽といった固有の伝統文化も豊かだ。

 わずか10年前まで、ビニャーレスの経済を支えていたのはタバコ栽培を中心とする農業だった。だが、経済の自由化が進むにつれて、外国人観光客が流入。ミジョさんのように農業からサービス業に身を転じた人々もいる。

 だが新たな繁栄は、長くは続かなかった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響で、ゲストハウスやレストラン、カフェやショップに改造された色鮮やかな木造の家々は、悲しいほどにがらんとしている。

 ミジョさんは、観光業は「いくつもの家族を大いに助けてくれました」と語る。ミジョさんは民宿の営業を再開できる日が待ちきれないという。(c)AFP/Leticia PINEDA