時計ジャーナリストが選ぶ"これぞ"の1本! コロナ禍の影響で時計フェアは軒並み中止になったものの、魅力的な新作が数多く発表された2020年。その中から時計ジャーナリストが選んだ"本気で欲しい!"と感じた傑作モデルとは?

BVLGARI(ブルガリ)/オクト フィニッシモ オートマティック サテンポリッシュ
最後の大規模展示会となったドバイで発表。サテン×ポリッシュの仕上げも素晴らしいが、世界最薄を捨ててまで防水性を高めた英断を評価。これはフィニッシモのラグジュアリースポーツ化だ。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径40㎜。税別130万円。

ケース厚を1.23㎜厚くしたことで、リュウズをネジ込み式に変更。これにより100mの防水性能を確保。ムーブメント造形も美しい。

withコロナの時代には時計の価値も変わる? いや変わらないよ!

コロナ禍による緊急事態宣言が解除された2020年5月頃から、頻繁に耳にするようになったニューノーマルというワード。ステイホームとオンライン会議が当たり前となって、高級時計市場の好みにも、若干の変化が起こったようだ。

2010年代を通して、時計のトレンドらしいトレンドと言えば、ラグジュアリースポーツの一大ブームと、そこから派生したスポーティウォッチの普及しかなかった。ところが一転して、最近ではもっと普通の時計が売れていると聞く。例えばブレゲならば、「マリーン」ではなく「クラシック」が伸びているというのだ。これは時計が"ハレのアイテム"ではなくなって、もっと内向的な方向にユーザーの嗜好が変化したことを意味する。

これまでの10年は、時計とは見せびらかすものであって、それには対象者を必要とした。しかし今や、腕上の宝物は自分で愛でるしかないのだ。もっとも筆者みたいな時計ヲタクは、そもそも内向的なチョイスしかしなかったのだけど……。ブルガリ「オクト フィニッシモ」は、もともと世界最薄のレコードホルダーだった。それを自ら1.23㎜厚くして防水性を高めた。この煮詰め方に惚れてしまうのだ。

鈴木裕之(すずき・ひろゆき)/フリーライター兼時計専門誌の編集部員。今回のコロナ禍でスイス取材ができなくなって欲求不満気味。2020年末には腕時計の新規媒体を起ち上げる予定。