【2月28日 AFP】新型コロナウイルスワクチンをめぐっては今週、接種が進んでいる英スコットランドとイスラエルで実際に高い発症予防効果が確認されたとの研究結果が相次いで発表された。ただ残る疑問は、ワクチンには感染を予防する効果はあるのかというものだ。専門家によると、この疑問に答えるには多くの要因を考慮する必要がある。

 英国医師会(BMA)公衆衛生学委員会の前委員長で防疫コンサルタントのピーター・イングリッシュ(Peter English)氏はAFPの取材に対し、「大きな懸念は、ワクチンが発症や入院、死亡を予防する一方、伝染を十分に予防しない場合だ」と述べた。

■「エスケープ変異株」

 ワクチンで感染が防げない場合、すでに新型ウイルス流行により人々の生活や経済が大きな打撃を受けている地域では、ワクチン接種完了までマスク着用、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)、比較的厳格なロックダウン(都市封鎖)を継続する必要が出てくる。

 イングリッシュ氏は「新型ウイルスのまん延が続く中で、ワクチンが効かない『エスケープ変異株』が生まれるという、より大きな危険もある」と指摘した。

 英イングランド、南アフリカ、ブラジルではすでに、ウイルスが新たな宿主を見つけることが難しくなる中で、従来株よりも感染力や重症化リスクが高い変異株が出現している。これは、パンデミック(世界的な大流行)の進行過程では想定内の段階だ。

 だが、最近発表された研究結果や、現在進んでいる研究からは、楽観できる理由も示されている。

 スコットランドの全人口540万人のデータを基に行われた研究では、現実世界でのワクチンの発症予防効果が90%を上回ることが示された。スコットランドでは、人口の2割が米製薬大手ファイザー(Pfizer)製、あるいは英オックスフォード大学(University of Oxford)と英製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)が共同開発したワクチンのいずれかの接種を受けた。

 24日、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された論文も、イスラエルでワクチン接種を済ませた人と未接種の人それぞれ60万人近くのグループを比較した結果として、臨床試験(治験)結果と同程度の症状抑制効果がみられたと結論付けている。

 だが、イスラエルの研究ではスコットランドとは異なり、2度目の接種から少なくとも1週間たった人の感染予防率が92%に上ったことが示された。