【2月26日 People’s Daily】新設の社区は住み心地が良いのに、なぜ「断崖の村」に帰って家を建てるのか?

 ここ数日、イ族男性のモウセスブレさんはセメントや強化プラスチックの瓦などの建築材を背負い、毎日山頂まで2往復している。6000本以上の鋼管で建てられた「鋼の階段」は、全長3キロ近くになり、上るのに4時間かかる。

 山の下に置かれた新設の社区は店も学校も近く、街灯が明るく、清潔で、もともと山頂で住んでいたレンガの家よりずっと良かった。2020年5月、中国四川省(Suchuan)涼山イ族自治州(Liangshan Yi Autonomous Prefecture)にあるアトゥリエ村(Atulieer)に住む84の貧困世帯は山のふもとに移住して新しい家に住み、職業訓練を経て都市で就職し、暮らし向きは良くなった。新しい住居は間取りも広く、家電なども揃っていた。

 新生活に不満がないにもかかわらず彼が村に通う答えは、山の上にあった。「断崖の村」に登ると、山々に抱かれて、群れなす旅行客がオリーブの林で写真を撮っている。「家は自分で住むために修理するのではなくて、民宿にして旅行客に提供するのです」と、モウセスブレさんは笑いながら言う。

 過去には貧困地域だったこの村は、今やネットで人気高い景勝地である。以前は村民が山を下りるには800メートルの崖を藤のツルでできたハシゴで昇降せねばならず、非常に危険だった。2016年末から、地元行政が100万元(約1600万円)以上を出資し、滑り止め付きの鋼の階段を造った。それ以来、「断崖の村」は整備が進み、5G回線がひかれてからは、ライブストリーミングを通じて外の世界に知られ、旅行客が増え、人気のスポットになった。

「去年の国慶節(10月1日)の前には、村の役員に軽食の店をしないかと勧められました。連休中は1日1000元(約1万6000円)以上売り上げました!」と、村民は嬉しそうに語る。貧困扶助役員の指導のもと、「断崖の村」では飲食店や日用雑貨店が多く開店した。

 村民は引っ越した後のレンガの家を旅館にし、1泊50元(約800円)に設定した。しかし、雨が降ると泥レンガは雨漏りや隙間風がひどく、また多くは床が砂を固めただけのもので、床をセメントで覆ったものはまだ少ない。

「この家は屋根を2層の強化プラスチックで補修し、床もセメントで固めました。夏は涼しく冬は暖かく仕上がりました」モウセスブレさんが新しく完成した家屋に案内してくれた。「6家族の仲間と3軒の建物を直しました。春節の旅行シーズンに間に合いました」

「去年4月に私は70頭あまりの羊を買い、今は120頭います。すでに予約が入っているので、元本を除くと4万元(約65万円)ほどのもうけになります」と、モウセスブレさんは言う。その他にも農地を利用してオリーブの栽培請負を行うなどして、家屋補修の費用に充てたという。

「民宿が開店すれば、旅行客が増えてさらに村は豊かになります」と、村の党支部書記は話す。「政府の補助で生産物の種類も増えており、『断崖の村』の名はより広く伝わっていくでしょう」(c)People’s Daily/AFPBB News