【3月7日 AFP】コロンビア先住民のロセンド・クイラ(Rosendo Quira)さん(52)は、餌にコンドルが引き寄せられることを願い、薬草の小枝を静かに振る。上空では、海抜約3200メートルの峠へと向かい、コンドルが雲を通り抜けて滑空する──。一連の様子は隠しカメラで撮影される。

 2月中旬、アンデス山脈(Andes mountain)を象徴する鳥であるアンデスコンドルの個体数調査が初めて行われた。調査は国内約100か所、ボランティアの協力を得て実施された。

 参加したボランティアは約300人。多くはクイラさんのような先住民だが、先祖から伝わる知識の豊富さではクイラさんは群を抜いている。

 南西部プラセ(Purace)にある先住民居留地の伝統医であるクイラさんは、岩の上に肉片を置き、セージの小枝を使って薬草の浸出液を振りかける。ほどなくすると、翼幅約3メートルの鳥が一羽、肉片が置かれた岩の上に舞い降りた。

 先住民であるココヌコ(Kokonuko)の人々は、世界最大級の猛禽(もうきん)類コンドルとコンドルが止まる岩を、神聖なものとみなしている。

 専門家らによると、コロンビアのアンデスに生息するコンドルはわずか130羽ほどで、国際自然保護連合(IUCN)では局所的な絶滅が懸念されている。世界的にも憂慮すべき状況だ。

 隠しカメラを設置した生物学者のアドリアナ・コラソス(Adriana Collazos)氏はAFPに、「国内に何羽生息していて、どのような状態にあるかを知る必要がある」と語った。

 個体数調査により、今後の個体数増加の取り組みでは雌雄のバランスを保つことが可能になる。コロンビアのコンドルの約半数は飼育下繁殖を経て野生に放たれたものだ。

 プラセの先住民らは、隠しカメラがコンドルに与える影響に懸念を示す。それでも絶滅の危機からこの神聖な鳥を救いたいとの願いから、調査に協力している。

 先住民居留地のハビエル・ホホア(Javier Jojoa)首長代理はAFPに、「あの象徴(的な鳥)が消えてしまったら、われわれの居留地にとって致命的な喪失となる」と語った。(c)AFP/Juan Sebastian SERRANO