ルーマニアのバイオリンメーカー、後継者問題に直面
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【3月12日 AFP】ルーマニア中部レジン(Reghin)の工房で、バジーレ・グリガ(Vasile Gliga)氏は自身の作ったバイオリンを誇らしげに見つめる。工房にはたくさんのバイオリンが天井からつり下げられ、また、棚に並べられている。グリガ(Gliga)はレジンにある世界的に有名な楽器メーカーの一つで、30年以上前からその名を知られている。
市内大手のグリガでは、年にわずか数個の楽器しか作らない熟練した職人も働く。
グリガ氏は、成功の秘訣(ひけつ)は単純なものだと言う。「魂をほんの少し、込めるのです」
グリガ氏は29歳だった1988年、初めてバイオリン2丁を製作した。
昨年、グリガはバイオリンからコントラバスまで、5万丁を販売。うち、国内の顧客に販売されたのはわずか2%だった。
欧州連合(EU)統計局(Eurostat、ユーロスタット)の2018年のデータによると、ルーマニアはEU圏外へのバイオリン輸出でEU1位を誇る。
だがこの業界の多くの職人がそうであるように、グリガ氏は自身が絶滅危惧種のようなものかもしれないと懸念している。
ルーマニアの著名な弦楽器職人らは現在、二つの課題に直面している。海外の低価格な製品との競争と、伝統をつなぐ次世代の職人探しだ。
■400万人が海外へ移住
バージル・バンディラ(Virgil Bandila)氏が営むのは、グリガとは対極にある小規模な工房だ。
バンディラ氏によると、同市には事実上、街の通りごとに1人か2人の弦楽器職人がいる。バンディラ氏の小さな工房では、職人7人が働いている。
バンディラ氏の最大の懸念は、秘伝の技法を託す後継者が見つけられるかどうかだ。今の職人について、「私たちは皆1970年代生まれですが、私たちの後は誰もいません」と語る。
ルーマニアではここ数年でおよそ400万人が、よりよい生活を求めて主に西欧へ移住した。