【2月27日 AFP】トルコの医師セルガン・サラジオウル(Sergan Saracoglu)さんは、新型コロナウイルスワクチンの接種を推し進める任にあるが、山岳地帯の厳しい天候とワクチンへの恐怖という二つの障壁に立ち向かっている。

 注射器が詰まった金属ケースを背負って山を登り、サラジオウルさんは恐れる住民を説得して回る。

 101歳の女性はワクチン接種に「積極的でした」とサラジオウルさんは語る。南東部の村イマムリ(Imamli)でサラジオウルさんが接種を行う高齢者リストに、その孫のいる女性は載っていた。「でも、中には予防接種を拒否する人もいます」

 トルコの人口8300万人は、欧州とアジアをまたぐ国土の四方八方に住んでいる。困難と思える地域に暮らす人々もいる。

 トルコでは1月中旬に中国製ワクチン「CoronaVac」の接種が始まった。滑り出しは順調で、開始から数日間で50万人以上の接種が完了した。

 だが、医師らが大都市を離れて遠隔地を目指しだすと接種ペースは大幅に落ちた。クルド人が遊牧や農業をして暮らす数百人規模の集落、イマムリやオズベイリ(Ozbeyli)もそうした遠隔地にある。

 オズベイリでサラジオウルさんの一行は、先行接種対象である65歳を超える人のうち、まず男性1人と女性2人の元を訪ねるだけで1時間かかった。雪に覆われた未舗装の山道をATV(全地形対応車)で進んでたどり着いたものの、女性2人にはきっぱりと拒否され、逃げられてしまった。男性は見つけることができなかった。

 一帯でクルド人民兵からオズベイリを守っている警備員、マフムート・シェケル(Mahmut Seker)さん(32)は、善意の医師が接種拒否という不運に見舞われたことに驚きはないという。

「神のおかげで、ここにそのウイルスはいません。空気も澄んだきれいな場所です」とシェケルさん。「だからこそ、みな予防接種を受けたくないのです。彼らは少し恐れてもいます」

 オズベイリとイマムリでは、感染者はわずかで死者は報告されていない。その理由の一つはこれらの地が隔絶されていることだ。そして、ここ一年でウイルスが猛威を振るった近隣都市へ行くのを住民が怖がっていることもある。

 映像は2月15日撮影。(c)AFP/Kadir DEMIR