【4月10日 AFP】南アフリカ・ヨハネスブルクのコミュニティーセンターで、ノマカウェ・ドロモ(Nomaqhawe Dlomo)さん(39)は皿にどっさり盛られたメイズミール(ひき割りトウモロコシを練ったもの)と野菜をたいらげた。ドロモさんは新型コロナウイルス禍で仕事にあぶれ、頼みのミシンも昨年起きた自宅の火災で使えなくなっていた。

 ドロモさんの皿に盛られたキャベツとカボチャは、数日前にはヨハネスブルクにある同国最大の生鮮食品市場で廃棄され、焼却を待つばかりだったものだ。

 世界自然保護基金(WWF)によると、南アでは食料の約3分の1が捨てられ、その量は年間約1000万トンに上る。

 コロナ禍で生活困窮者の増加を目の当たりにしてきたコミュニティーセンターの責任者ケティウェ・ムカリティ(Khetiwe Mkhalithi)氏は、「活用できる食料が捨てられている」と語る。

 慈善団体は長年、国内の食品再分配に関する法律の再検討を求め、政府に働き掛けてきた。南アでは新型コロナの感染が広がる前から、飢えに苦しむ人は1100万人を超えていた。

 余剰食料の活用を目指すグループ「Nosh」の責任者ハンネケ・ファンリンゲ(Hanneke Van Linge)氏はAFPに、「食料品に関する問題の法的責任は生産者にあるんです」と説明した。「そのために多くの農家や小売店、ホテルは訴訟を恐れて、廃棄処分になった食べ物をただで提供しようとしないのです」

 だが、新型コロナ対策としてさまざまな規制が導入されてきた1年近くの間に経済は疲弊し、食料生産者らは行動を起こし始めた。困窮者向けの無料食堂や食料調達事業に寄付し、援助の手を差し伸べる人が増えてきている。

 ファンリンゲ氏は、「私たちは人間関係を築きつつあります。(中略)問題を避けつつ外から関わるのではなく、もっと正面から進められるようにです」と語った。