【2月27日 東方新報】中国の国営中央テレビ(CCTV)が、13日から日本のアニメ『はたらく細胞(英題:Cells at Work!)第1シーズン』の放送を開始し、同国内のインターネットで大きく話題を集めた。中央テレビで日本のアニメが放送されたのは約14年ぶりで、日中関係の改善が背景にあるのではないかと指摘する声もある。

『はたらく細胞』は、酸素を全身に運ぶ赤血球や、ウイルスと闘う白血球など、さまざまな細胞を、人体を守るキャラクターに擬人化し、病気と闘い、命を守るストーリーを展開されている。日本の漫画誌「月刊少年シリウス(Monthly Shonen Sirius)」(講談社<Kodansha>)に連載された清水茜(Akane Shimizu)氏の漫画が原作で、2018年にアニメが制作された。日本でも人気を博していた。中国では数年前からインターネットなどで話題となり、2019年に中国テレビ界で権威のある「白玉蘭賞」の最優秀脚本賞を受賞した。その後、テレビで見たいといった要望が中国の各テレビ局に寄せられたという。

 中国では改革開放初期の1980年代は、各テレビ局はそろって日本のアニメを放送していた。『鉄腕アトム(英題:Astro Boy)』や『一休さん』などは中国の子どもの間で、話題の中心だった時代もあった。しかし、その後、「自国のアニメ産業を育てるべきだ」といった意見が増え、日中関係の悪化などもあって、日本のアニメは徐々に中国のテレビから姿を消した。中央テレビは2007年以降、日本のアニメを放送することはなくなった。その代わりに、オオカミと羊の攻防を描いたストーリー『喜羊羊与灰太狼(英題:Pleasant Goat and Big Big Wolf)』など中国国産のアニメが主流となった。

 今回中国で放送されたのは、新型コロナウイルスの流行で、社会全体が健康や感染症に対する関心が高くなったことが背景にあると指摘される。『はたらく細胞』は単なるアニメではなく、子どもたちに免疫や感染症予防の知識を教える教育的な役割もあるといわれる。また、米中対立の深刻化するなか、習近平(Xi Jinping)指導部は日本重視の姿勢を打ち出したことも背景にあると解釈する中国人メディア関係者もいる。

 中国のインターネットには、『はたらく細胞』について「テレビで久しぶりに日本のアニメをみて感動した」「さすが日本のアニメ、描写が細かい」「人の体のことをこんなに面白く描けるのは日本の漫画家だけだ」といった好意的な書き込みが寄せられた。「次は鬼滅の刃(英題:Demon Slayer)をぜひ見たい」といった要望も多くあった。しかし、中央テレビの関係者は「鬼滅の刃には暴力的なシーンが多いので、今のところ、中国で放送することは難しい」と話している。(c)東方新報/AFPBB News