【2月24日 AFP】「世界一孤独なゾウ」がかつて暮らし、劣悪な飼育環境で知られたパキスタンの首都イスラマバードにある老朽化した動物園が、750万ドル(約7億9000万円)規模の大改装計画に着手している。

 この動物園では以前、パキスタンに生存する最後のアジアゾウ、カーバン(Kaavan)が飼育されていた。35歳の雄のカーバンは8年前に相方のゾウが死んで以降、独りぼっちで暮らしており、その窮状については動物愛護活動家らが批判していた。

 カーバンの劣悪な飼育環境を知った米女優で歌手のシェール(Cher)さんが移送資金の調達を支援し、カーバンは昨年11月、注目を浴びながらカンボジアに移送された。

 1978年に開園したこの動物園の敷地面積は、最終的には約12ヘクタールに及び、飼育員らは動物の世話に追われた。また、動物は狭いコンクリート製の囲いの中に入れられていた。

 その飼育環境のひどさから、高等裁判所は昨年、閉園と飼育するすべての動物の移送を命じた。しかし、移送作業は惨事を招き、飼育員がおりから出そうと干し草に火を付けたところ、ライオン2頭が死んだ。

 現在、気候変動省が同園の再生事業を担当しており、大幅に改良された動物保護センターの設立が計画されている。

 自然保護機関「IWMB」のワカル・ザクリヤ(Waqar Zakriya)氏は「サルやニルガイ(レイヨウの一種)、シマウマ、クマなど約380匹をパキスタン国内外の複数の保護区域に一時的に移している」と述べ、「すべての動物は、おりの中ではなく国立公園内の自然な生育環境に戻される予定だ」と語った。

 計画中の保護センターには、パキスタン初となる負傷した野生動物の治療やリハビリを行う施設も併設される予定となっている。

 映像は2020年12月、2021年1月に取材したもの。(c)AFP/Nasir JAFFRY