■子どもの教育のために移住を決意

 多くの人々は教育を受けた中流階級で、家庭を築き、幼い子どもがいる。十分な蓄えがあり、移住後何か月も英国で職探しをする余裕がある。また、多くは不動産を所有しているが、ローンはほぼ返済している。

 心理学者のエリーさん(30)はIT専門職の夫と2年以内の移住を目指しているが、中国政府が英国への移住を阻止するような動きが見えたら、出発を早める計画もあると言う。「息子の将来がかかっています。香港での教育は以前とは変わってきましたから」

 英国への移住を選んだ香港の人々が理由としてよく挙げたのが、オープンな教育制度の魅力だ。

 時に暴力を伴った2019年の大規模な香港民主化デモ以降、中国当局は学校やキャンパスでの抗議活動を排除すると明言している。

 香港教育局は2月上旬、国家安全保障に関しては「論議や妥協の余地はない」という新指針を発表。政治的なスローガンや歌を口にし、「人間の鎖」をつくる行為は警察介入の正当な理由になり、学校の教科書は愛国教育を重視した内容に改定されている。

 ウィンストン・ウオン(Winston Wong)さんとコニー・チャン(Connie Chan)さんは40歳。約7000人の同胞と同じく、昨年、英国に移住し、東部エセックス(Essex)州のチェルムスフォード(Chelmsford)に落ち着きつつある。

 移住の第1の動機は、9歳の息子のために「質問し、自ら考え、公正と平等を守ることを促す学校」を探すこと。ウオンさんは、金融関係の仕事で高収入を得ていたが、英国ではまだ職が見つからない。

 香港で医療関係の職に就いていたマイクさん(39)も同じく求職活動を続けている。最近、2人の子どもを含め、家族でマンチェスターに移ってきた。香港にいた頃は、休暇になると家族で日本やタイにしょっちゅう旅行していたが、現在の給料は以前の3~4割程度だ。「だから、一からやり直さないと」 

 それでも悔いはないと言う。「(香港を)出られるなら出てこいと友人たちにも言ってある」と続けた。「私たちが愛した香港はすでに失われている」 (c)AFP/ Jerome Taylor and Su Xinqi with Mathilde Bellenger in Chelmsford