■母親のように再教育

 2匹のマンドリルの行き先は、村から約60キロのフランスビル国際医学研究センター(CIRMF)にある霊長類学センター(CDP)。2匹が野生に返ることがあるとすれば、このドライブは、そのための長い道のりのほんの始まりにすぎない。

 科学者は保護したサルたちを隔離し、エボラ出血熱、肝炎、結核、エイズウイルス(HIV)などに感染していないかを検査する。その後、トレーナーがサルの行動パターンを再教育する。

「託児所」のドミトリ・ムブル(Dmitri Mboulou)主任が、2匹の小さなチンパンジーに哺乳瓶で優しくミルクを飲ませている。母親をハンターに殺された子ザルたちだ。

「しっかり生きることを教えます。私はちょっと母親のようですね」

 隔離の時期を終えると、子ザルたちは仲間と交ざり合い、新しい群れとしてのつながりを築いていく。これは野生環境で生きていく上で欠かせない。

 同センターは、9種350匹のサルを保護している。密猟で親を失った子どものサルや、不正取引から救出されたか、CIRMFの実験対象だったサルも含まれている。

 保護団体SGPの代表でCDPセンター所長でもあるバルテレミー・ヌグバンゴイェ(Barthelemy Ngoubangoye)氏によると、毎年50匹以上保護されるという。

■「絶滅危惧種の保護は欧米の問題と思っている」

「(ガボンの人々は)先祖もサルをずっと狩猟しており、自分たちは何も悪くないと思っている。おまけに、絶滅危惧種の保護は、欧米が取り組む問題だと思っている」とヌグバンゴイェ氏は語った。

 フランスビル近くのルケディ自然公園(Lekedi Natural Park)では、リハビリ・プログラムの最終段階が進められ、サルたちは本来の生息地に戻れる時が来るまで、半ば自由な環境で観察される。

 森に帰るための条件を同公園の獣医師ポーリーン・グレッツィンガー(Pauline Grentzinger)氏がいくつか挙げた。「集団に生存能力があり、病気の仲間がおらず、監視可能な場所であること。密猟者や他のチンパンジーの群れがおらず、近くに人間もいないこと」だ。

 かなり厳しい挑戦だが、ガボンでは成功例がある。(c)AFP/Adrien MAROTTE