【2月21日 AFP】米司法省は、ナチス・ドイツ(Nazi)の強制収容所の元警備員(95)をドイツに強制送還したと発表した。

 フレドリック・カール・バーガー(Friedrich Karl Berger)元警備員は米テネシー州で生活し、ドイツ国籍を保持していた。米司法省は強制送還の理由について、バーガー元警備員が1945年にノイエンガメ(Neuengamme)強制収容所の武装警備員として「ナチス主導の迫害」に加担していたためだと説明した。

 1959年から米国在住だったバーガー元警備員の強制送還は、司法省の移民担当判事が昨年3月に命じていた。この時レベッカ・ホルト(Rebecca Holt)判事は、「劣悪な」状況に置かれた収容者らが「極度の疲労や死に至るまで」酷使された独メッペン(Meppen)近郊の従属収容所に、青年時代のバーガー元警備員が配置されていたと指摘した。

 記録によると、ノイエンガメ強制収容所では4万人を超える収容者が死亡した。バーガー元警備員は収容者らが過酷な扱いを受け、死者も出ていたことは知らなかったと述べていた。

 独北部ツェレ(Celle)の検察当局によると、バーガー元警備員は20日に送還され、取り調べが行われるフランクフルトに到着した。独検察当局は昨年12月、証拠が不十分としてバーガー元警備員に対する訴追を取り下げており、裁判が行われるかどうかは現時点で不明。ただ、バーガー元警備員が自身の嫌疑について話す意思があれば、裁判が行われる可能性もある。

 米政府は1979年、ナチスの残党を突き止めることを目的に、司法省内に特別調査室(OSI)を設けた。同省の20日の発表によると、これまでに109人に対する法的手続きで勝利したという。OSIの室長だったイーライ・ローゼンボーム(Eli Rosenbaum)氏は昨年AFPに対し、戦争体験者が減っている現状を踏まえるとバーガー元警備員の強制送還は米国で「最後の事例になる可能性が高い」との見解を示していた。(c)AFP