【2月19日 AFP】イタリアのメディアは18日、南部ナポリ(Naples)を拠点とする犯罪組織「カモッラ(Camorra)」のボスで、1970~80年代に他のファミリーと血で血を洗う抗争を繰り広げたことで知られるラファエレ・クートロ(Raffaele Cutolo)受刑者が死去したと報じた。

 報道によると、クートロ受刑者は長く体調を崩していたが、敗血症のため北部パルマ(Parma)にある病院の受刑者棟で17日に死去した。

 クートロ受刑者は、57年以上にわたり獄中生活を送りながらも非常に強い影響力を誇り、他のファミリーはこぞって上納金を払っていた。政治家が誘拐された際に、国がクートロ受刑者に仲介を依頼したことすらあった。

 1941年、ナポリ郊外の町オッタビアーノ(Ottaviano)生まれ。22歳の時、姉を侮辱した男を殺害して刑務所に入ったことが、その後の人生の方向を定めるきっかけとなった。そのカリスマ性と詩才から、刑務所内では「教授」と呼ばれ、たちまち受刑者仲間の支持を集めた。出所した仲間たちを通じて、外の世界にも影響力を広げていった。

 クートロ受刑者は獄中で、厳格な階級制と加入規定を有した武闘派ファミリー「新編成カモッラ(La Nuova Camorra Organizzata)」を新たに結成。他のファミリーに抗争を仕掛け、イタリアの組織犯罪史上でも有数の血なまぐさい時代をもたらした。報道によれば、1982年だけで250人以上の死者が出ている。

 クートロ受刑者の影響力の強さを示す逸話の一つに、他のファミリーに「税金」を課したというものがある。また、治安当局や警察にも顔が利き、地元政治家が1981年に極左過激派組織「赤い旅団(RB)」に誘拐された際には、当局がクートロ受刑者に助けを求めるほどだった。

 カモッラに詳しい作家のロベルト・サビアーノ(Roberto Saviano)氏は、クートロ受刑者について「強力なボスで、首相以上の権力を持っていた。そのため、生涯を刑務所で過ごすこととなった」と伊紙スタンパ(La Stampa)に語っている。(c)AFP