【2月19日 AFP】デービッド・アベル(David Abel)さんと妻のサリー(Sally Abel)さんにとって、昨年の「ダイヤモンド・プリンセス号(Diamond Princess)」でのクルーズは、最悪の船旅だったかもしれない。しかし、すでにアベルさん夫婦は「航海に戻るのが待ちきれません」と語っている。

 同船で新型コロナウイルスの集団感染が発生し、検疫下に置かれてから1年。クルーズ業界は、アベルさん夫婦のような乗客の需要を追い風に、ビジネスの荒波を乗り越えたいと考えている。

 クルーズ業界について、アナリストらは今年後半までは順風満帆とはいかないだろうと予想している。しかし、すでにクルーズ旅行の予約は回復しつつある。

 ダイヤモンド・プリンセス号に乗船中、アベルさん夫婦は2人で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった。しかし、夫婦は来年前半までにクルーズ旅に5回行く予定。予約も済んでおり、6回目も思案中だ。

「ベッドで目覚めるたびに、世界で最もエキサイティングな都市や、面白い都市にいるのです。これに勝る楽しみはありません」。夫のデービッドさんは2月初め、ユーチューブ(YouTube)に投稿したビデオで語った。「私たちは海の響きが好きなんです」

 心配する人の言い分も知っている。しかし、「人類が過ごすレジャーのうち、クルーズは最も安全な部類の一つです」とデービッドさんは言う。

 ダイヤモンド・プリンセスが横浜沖に到着したのは、2020年2月3日。当時、謎だらけだった「新たなコロナウイルス」による死者数は世界で400人前後。日本では数人の感染者が確認されていただけだった。

 乗客2666人、乗員1045人を乗せた同船はアジアを旅していた。しかし香港で下船した男性が陽性反応を示し、状況は一変した。日本の当局は2月4日までに、同船ごと乗客・乗員全員を隔離。その後、船内の700人以上が陽性と判明し、13人が死亡した。

 米国人のソーシャルワーカー、サラ・アラナ(Sarah Arana)さん(54)は「とても現実とは思えませんでした」と振り返った。だが、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)の始まり、そしてウイルスと闘う科学技術を最前列で目にすることができ、「全く悔いはありません」と言う。