■「古着は不潔」から「古着はクール」に

 ファッション・パルピットでは、年会費として599シンガポール・ドル(約4万8000円)を払えば、服は何度でも交換できる。現在、チュンさんが持っている服の80%程度は同店で入手したものだ。

「古着交換のおかげで私のファッションはカメレオンみたいにころころ変わるようになったけれど、環境に配慮できるようにもなった」

 当局によると、小国シンガポールが2019年に排出した繊維製品や皮革の廃棄物は16万8000トンに及ぶ。ボーイング(Boeing)747型機の400機分を超える重さだ。

 フィリピン人服飾デザイナー、レイ・パディット(Raye Padit)氏がファッション・パルピットを設立したのはほぼ3年前。自分の業界が環境に与える影響と縫製作業者の劣悪な待遇を知ってからだ。

「シンガポールでの問題は、過剰消費と廃棄物」と同氏はAFPに語った。

「私たちが提供したいのは、ドレスアップをしながら、衣服を通して自己表現もできる場。でもそうすることで、地球も懐もいためてほしくない」

 ファッション・パルピットの会員は現在1500人を超え、事業も黒字になってきた。会員向けのワークショップでは、古着の繕い方やアップサイクル(価値を付加して再利用)する方法も教えている。扱っている商品は、大衆向けのカジュアルな衣服から、ハイエンドのプラダ(Prada)のバッグやクリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)の靴までさまざまだ。

 シンガポールでは、こうした常設店以外に単発の古着交換会やボランティアによる月1度の交換の集いも開かれている。

 だが裕福な都市国家シンガポールでは、古着業界は生まれたばかりで、新しい服を買うのではなく交換するよう世論を動かすのはまだ難しい。古着を扱う店は、アジアでは欧米ほどの人気はなく、誰が着ていたか分からない服は災いをもたらすという迷信を信じるか、不衛生だと考える人も多い。

 それでも、環境に対する意識が高まり、ソーシャルメディアを通じて商品を販売する新しいリサイクルショップがはやるなど、シンガポール人の消費傾向は変わってきたとパディット氏は指摘する。

「古着についての認識がだんだん変化してきている」とパディット氏は言う。「古着は汚くもないし、いまひとつの商品でもない。クールなものなんです」 (c)AFP/Catherine LAI