■ 「誤った」安心感

 サメよけを支持する州サメ委員会によると、2019年は690匹の海洋生物がかかったが、多くは生きたままリリースしている。

 サメツアーのダイバーで案内人のゲイリー・スノッドグラス(Gary Snodgrass)さんは数年前、各種ツアーのうち「イタチザメ・ダイブ」と銘打っていたツアーの名前を変更した。「今ではイタチザメをめったに見ない。数が劇的に減っている」からだ。

 世界のサメは、生息地の破壊、乱獲、そして高利益のフカヒレ売買により脅威にさらされている。

 2013年に発表された科学調査の結果によると、人間は年間推定1億匹のサメを殺している。現在は8種のサメがワシントン条約で保護されている。

 恐ろしい顎や鋭い歯ばかりが連想され、疎まれるサメだが、科学者や環境保護活動家らは、サメは生態系にとって重要であり、海洋生物の個体数の調整に欠かせないと強調する。

 サメよけネットはさほど有効ではないとの指摘もある。ダイバーらは、ほとんどの動物が上下わずか6メートルの網の下をくぐることができるのを知っている。その上、網にかかるのは、海岸の近くから戻るときが多い。

 ネットやドラムラインは海水浴客に「誤った」安心感を与える面もあるが、「サメは危険だが保護すべき」というメッセージでもあると話すのは、南アフリカの環境保護団体「ワイルドオーシャンズ(Wild Oceans)」の代表ジーン・ハリス(Jean Harris)さん。

 海水浴客を守るためにサメを殺すというのは、古い考え方だとハリスさんは言う。「人々の意識こそ変えなければいけない」

 映像は2020年12月、2021年1月に取材したもの。(c)AFP/ Maryke VERMAAK and Antoine DEMAISON