【2月17日 東方新報】中国ではアヘン戦争の経験から薬物犯罪には死刑を含む厳しい罰則があるが、それでも違法な薬物取引が後を絶たない。近年はインターネットや宅配便の普及などで手口の巧妙になっている。

 中国東部の安徽省(Anhui)の警察は今月、長期の捜査で12人を逮捕した薬物事件について発表した。

 2019年9月、安徽省含山県(Hanshan)の威という男が宅配便で覚醒剤を郵送している情報を現地の警察がつかんだ。9月28日、男が荷物の中に1グラムの覚醒剤を隠しているのを発見して逮捕。威容疑者は取り調べに「インターネットで暇つぶしに『クスリってどんな感じ?』と検索したら、『混世魔女(世界を惑わす魔女)』と名乗るネット民と知り合った。彼女から『馬到成功(たちまち功を成す、という意味の中国の成句)』と名乗る男を紹介され、1グラム1000元(約1万6339円)で覚醒剤を購入した」と供述した。

 警察は宅配ルートを詳細にたどって「馬到成功」を割り出し、2020年1月、中国中部・河南省(Henan)に住む馬容疑者を逮捕し、自宅から薬物2グラムを押収した。調べに対し、「インターネットで東南アジアのバイヤーと知り合い密輸した。200~300元(約3200円~4900円)で仕入れた覚醒剤を1000~1500元(約1万6000円~2万4500円)で売っていた」と供述した。

「混世魔女」も同じ1月に逮捕された。中国北部・黒竜江省(Heilongjiang)に住む23歳の女、孫容疑者で、「馬到成功」と連絡が取れなくなった後、「竄天猴(空飛ぶ猿)」という男から薬物を購入していた。「竄天猴」は複数の偽装IDと口座を持ち、警察の捜査を警戒していたが、2020年4月に中国東部・四川省(Sichuan)に住む唐容疑者を特定し、逮捕した。

 薬物取引ネットワークは内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)、河北省(Hebei)、チベット自治区(Tibet Autonomous Region)、雲南省(Yunnan)、広東省(Guangdong)など中国全土の10以上の省・自治区にまたがり、12人を逮捕。「混世魔女」の孫容疑者が今年1月に懲役2年6月の実刑判決を受けるなど、司法の裁きを受けている。

 中国では長年、違法薬物の常用者が増え続けていた。国家薬物禁止委員会弁公室によると、2018年末の違法薬物常用者は前年比5.8ポイント減の240万人となり、初めて減少に転じた。若者向けの啓発活動や取り締まりの強化によるが、この常用者の数は更生施設などに登録された人数で、市中の実際の薬物常用者は数倍に上るとみられる。

 近年はインターネットや宅配便を使った取引が増え、第三者の支払いプラットフォームを使い匿名で代金を振り込ませるといった「薬物犯罪のIT化・スマート化」が広がり、摘発が困難にさせている。海外の中国人留学生や中国在住の外国人を介した取引など、ルートも多様化している。

 また、東南アジアで麻薬が栽培されている「ゴールデントライアングル(黄金の三日月地帯)」からの密輸も依然として多い。

 1月26日、ミャンマーと接する雲南省国境警察署は、給油ホースに埋め込まれた覚醒剤を発見した。通常のホースより感触が硬いため輪切りにすると、ホースが二重の層になっており、1.6キロの覚醒剤が見つかった。翌27日には、重さが異なる4冊の本を見つけ、ページをくりぬいた空間に隠していた計1.9キロの覚醒剤を押収した。

 広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)では1月、1.5キロの違法薬物を隠し持っていた3人の容疑者を逮捕し、1人は14歳の少女だった。

 最高人民検察院第2検察庁の元明(Yuan Ming)長官は「薬物犯罪の摘発件数は依然として高い水準で推移している。ネットを使った取引や犯罪グループの組織化が進んでおり、今後も厳しく取り締まっていく」と表明している。(c)東方新報/AFPBB News