【2月28日 AFP】英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いに、オペラのソプラノやテノール歌手らが加わった。感染症による呼吸障害や不安に対処するための呼吸法を教え、患者の力になろうとしている。

 ロンドンを拠点とするオペラ・カンパニー「イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)」は、1000人の新型コロナ患者を対象に呼吸法プログラム「ENOブリーズ(ENO Breathe)」を展開中だ。6週間の試行で成果を確認。歌唱や呼吸術、瞑想(めいそう)健康法を取り入れた訓練を行っている。

「このプログラムから力をもらいました」と試験段階で参加したシーバさんはAFPに語った。「病気にかかったことが原因の息切れに、どう対処したらいいか分かりました」と言う。「グループ音楽療法と似ていました。みんなとても気が合って。『いいな、通じ合える人間がいるんだ』って気分になれました」 

 新型コロナの患者は、最初の診断から8~12週間後にこのプログラムに参加可能だ。この取り組みはENOと、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)が協力している公的医療制度「国民保健サービス(NHS)」の独立法人が提携して立ち上げた。

 ウイルスが消失した後も数週間から数か月にわたって息切れや不安を含む症状が続く「長期コロナ感染症(Long COVID)」の患者も、ビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」を通じて訓練に参加できる。プロの発声指導者が回復の手助けをしてくれるのだ。

「私たちが現在置かれている状況に合わせて構成されています」と同プログラムのクリエーティブディレクター、スージー・ズンパ(Suzi Zumpe)氏は述べた。「デジタルプラットフォームで人々がつながりを実感できるなんて、すごいことです」

 歌手たちは横隔膜呼吸や子守歌の歌唱など、オペラの世界で使われている技術を応用しながら、患者に深い呼吸法を指導する。

 試験プログラムに参加した10人のうち9人が、息切れが確かに改善し、不安も和らいだと報告した。

 ENO学習・参加プログラム主任のジェニー・モリカ(Jenny Mollica)氏は「これによって国民保健サービスへの負担を低減しつつ、人々がより速やかに健康を取り戻すことに貢献しています」と述べた。

「重度の息切れとそれに伴う不安感があるときには、それに応じた運動をすれば、呼吸を遅くして整えてから頭を追いつかせることができます」

 マット・ハンコック(Matt Hancock)保健・社会福祉相は、呼吸法プログラムを「この恐ろしいウイルスのせいで苦しんでいる人々を助ける」取り組みとして歓迎している。(c)AFP