【2月14日 AFP】英首相官邸に住む猫のラリー(Larry)は、英政界の中心的存在として10年間にわたってロンドンのダウニング街(Downing Street)10番地に君臨し、今や昼寝をするその姿は生ける伝説となっている。

 これまで3人の英首相に仕えてきたキジトラのラリーは2011年2月15日、4歳のときにロンドンの動物保護施設「バタシー・ドッグズ&キャッツ・ホーム(Battersea Dogs and Cats Home)」からダウニング街10番地にやって来た。英首相官邸公式サイトの経歴によると、ネズミ取りのうまさで選ばれた。

 ラリーは英首相官邸初の「ネズミ捕り長官」の称号も持っている。だが、ラリーの就任後、初代の首相だったデービッド・キャメロン(David Cameron)氏によると、ラリーは最初の数か月間で3匹のネズミを捕まえて以降はやる気をなくし、手を出さなくなったという。

 しかし、ラリーはその後も権力にしがみつき、ソフトパワー外交を繰り広げてきた。

 英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)をめぐる国民投票で「離脱」が支持され、キャメロン氏が官邸を去ったときも、ラリーはかたくなにそこから動こうとしなかった。

 キャメロン氏は議員との最後の質疑でラリーとの不仲説の釈明に追われ、ラリーと一緒に写った写真を高々と掲げてラリーを愛していないといううわさを否定した。

 以来、ラリーは首相官邸のスタッフの猫とみなされ、テリーザ・メイ(Theresa May)前首相を経て現在はボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相と同居している。

■「仕切っているのは吾輩」

 ラリーはツイッター(Twitter)に非公式アカウント「@Number10cat」も持っており、43万3000人のフォロワーがいる。ソーシャルメディア経由でアカウントに問い合わせたところ、人間は関与していないという答えと一緒に、長年にわたる英首相官邸での生活を振り返る言葉が返ってきた。

「ラリー」は、「覚えておくべき重要なことは、ここに永住しているのは吾輩(わがはい)で、首相たちは解任されるまでのわずかな間、吾輩と同居するにすぎニャい点だ」と述べた。「彼らはみな遅かれ早かれ、この場所を仕切っているのが吾輩だと気付く」 (c)AFP/Sylvain PEUCHMAURD