【2月16日 AFP】新型コロナウイルスの流行で、米ニューヨークのミシュラン(Michelin)の星付きレストランで働くチャンスを失ったシンガポール人のリム・ウェイ・キアット(Lim Wei Keat)さん(25)は、自分のルーツに戻り、屋台の料理人になることを決めた。

 シンガポールでは、「ホーカー」と呼ばれる屋台の料理人を目指す若者が増加しており、食文化の担い手として新世代に対する期待が高まっている。

 シンガポールには屋外フードコートが多数あり、中国系、インド系、マレー系の影響を受けた多種多様な料理が提供されている。

 金融ハブとなった後もホーカーの伝統は根付いており、今も多くの人の生活の中心的存在となっている。また、昨年12月には、ホーカー文化は国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の「無形文化遺産」に登録された。

 だが、ホーカーの料理人の年齢の中央値は59歳で、多くは引退の時期が近づいている。ホーカーの料理人は若者に人気の職業とはいえず、ホーカーの伝統とおいしい料理が消えてしまうのではないかという懸念が高まっている。

 リムさんが、政府のプログラムを通じてホーカーで修行するようになったのは、新型コロナウイルス対策の渡航制限のために、予定していた米国のレストランでのインターンシップに参加できなくなったからだ。

 だが今は、天職を見つけたと感じている。

「若者が店を継ぎ、(調理法を)学ばなければ、ローカル料理が消えてしまう」と、リムさんはAFPに話した。

 ホーカーは通常、ビーフン炒めやキャロットケーキ(大根餅炒め)、カレーパフなど1、2種類の料理を専門にしている。リムさんは、永遠の定番「海南チキンライス」を選んだ。昔ながらの作り方にこだわりたいと思っている。