【2月21日 AFP】地域の教育から陥没している道路の補修まで、パク・ジヒョン(Park Ji-hyun)氏の社会的な関心は、英国の地方議会選挙に出馬する他の候補者と大差はない。パク氏が特異な点は、脱北者であることだ。

 パク氏は、圧政が続く北朝鮮を脱出して英国に亡命した。脱北者として、韓国以外の国で公職選挙に出馬する初のケースとみられている。

 パク氏は脱北後に中国で人身売買され、その後、送還された北朝鮮の収容所で悲惨な体験をした後、再び脱北。英国に庇護(ひご)を求めた。それから13年。52歳になったパク氏は5月の地方議会選挙に、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相率いる保守党(Conservative Party)から出馬を予定している。公約に掲げているのは、「声なき人々」を代弁することだ。

「英国の人たちがこの地に迎え入れてくれて、私はようやく自由を見つけた。その恩返しをしたい」とAFPに述べた。

 パク氏が飢饉(ききん)に見舞われた北朝鮮から最初に脱出したのは1998年。弟と徒歩で中国にたどり着き、そこで別れた。パク氏は人身売買業者に「妻」として売られ、夫となった男性はアルコール依存症のギャンブラーだった。

 中国で6年暮らし、息子1人を出産。その後、中国当局に逮捕された。単身で北朝鮮に送還されて政治犯収容所に入れられ、過酷な肉体労働を強制された。

 毎日が「飢えと監禁と拷問」の繰り返しだったとパク氏は明かす。一般人は「動物以下」の扱いだったという。

 病気になって収容所を追い出されてから再び脱北して中国に渡り、息子を取り戻した。2005年に他の脱北者と共に一時モンゴルを目指したが、断念。北京に移動して身を潜めて暮らした。その時に一緒にいた一人が今の夫だ。

 2007年、牧師に助けられ国連(UN)の難民機関に身を寄せた。翌2008年1月、夫と息子と共に英国への亡命を認められ、その後、イングランドのマンチェスター都市圏(Greater Manchester)にあるベリー(Bury)に定住した。