【2月11日 AFP】インドと中国の係争地、ヒマラヤ(Himalaya)の国境地帯をめぐり、インドは11日、同地から撤退する合意を中国と結んだと発表した。この係争地では昨年6月に死傷者が出る衝突が発生しており、今回の動きは隣接する核保有国間の緊張緩和に向け、最大の後押しとなる。

 両国は1962年、チベット(Tibet)に隣接するラダック(Ladakh)地方の国境をめぐり衝突。以後も国境が正式に合意されることはなく、相手側が国境侵犯を企てていると非難の応酬を繰り広げてきた。

 昨年5月、中国軍がパンゴン(Pangong)湖北部の一部にある境界線を越え、戦略的に重要なガルワン(Galwan)渓谷の一部に侵入したとインド側が非難したことが発端となり、情勢は悪化。

 6月中旬には同渓谷で激しい戦闘が発生し、インド軍兵士20人が死亡。中国側はこの衝突での死者数を明らかにしていないとはいえ、過去数十年で最悪の事態となった。世界1位と2位の人口を擁する両国が、国境地帯に数万人規模の増派を行った。

 ラジナート・シン(Rajnath Singh)国防相の11日の発表によると、撤退は10日から始まっており、昨年4月以降の建造物の撤去や、湖の北側の巡回などの軍事活動の一時停止といった「相互的かつ互恵的な措置」が取られるという。

 シン氏は、6月の衝突以降、印中軍幹部間で9度の協議を経て今回の合意に至り、「完全撤退後に」次の協議を行う方針を明らかにした。

 一方、中国国防省の呉謙(Wu Qian)報道官も10日、両国の前線の兵士らが「2月10日に予定通り同時に撤退を始めた」と述べている。(c)AFP