【2月24日 AFP】インド北部ヒマラヤ山脈(Himalayas)で7日、氷河崩壊が大洪水を引き起こしたが、これは起こるべくして起きた災害であり、気候変動やずさんなインフラ開発で様変わりした地域で再発する可能性があると専門家らは警告している。

 アジアには世界有数の河川がある。インドのガンジス(Ganges)川やインダス(Indus)川、中国の長江(揚子江、Yangtze River)、さらに中国から東南アジアを流れるメコン(Mekong)川。それぞれの長さは数千キロに及び、膨大な数の農民や漁民の生活を支え、数十億人に飲用水を供給している。だがこれらの大河は近年、かつてないほど切迫した状況にある。

 川の水源となる氷河が温暖化により縮小しているため、水の供給が脅かされると同時に土砂崩れや洪水の危険性も増している。一方、ダム建設や汚染により脆弱(ぜいじゃく)な生態系が損なわれているという批判の声もある。

「開発事業や固形・液状廃棄物の投棄、砂と石の採掘で、河川は本当に危険な状態だ」と、NGO「ダム・河川・地域住民の南アジア・ネットワーク(South Asia Network on Dams, Rivers and People)」のヒマンシュ・タッカー(Himanshu Thakkar)氏はAFPに語った。

「気候変動は、すでに始まっている長期のプロセス。影響はもう起きている」とタッカー氏は言う。「つまり、あらゆる面で河川は非常に大きな脅威にさらされている」

 インドで起きた今回の災害は氷河崩壊で引き起こされたとみられ、水の壁がウッタラカンド(Uttarakhand)州の谷に押し寄せ、橋と道路を破壊し、2か所の水力発電所が被害を受けた。その結果、ガンジス川に流入するダウリガンガ(Dhauliganga)川流域で数十人が死亡、150人前後が行方不明になっている。

 氷河が崩壊した原因はいまだ不明だが、地震活動が活発な地帯での水力発電事業が一因だった可能性がある。

「この地帯は地盤が緩みがちで、あれほど次々に水力発電開発を行うのには適していない」とタッカー氏は指摘する。「適切な計画立案や環境影響評価、地質調査が行われていない」