【2月17日 AFP】まばたきをしている間に見失ってしまいそうなその家は、診療所と美容院に挟まれて立っている。英国の首都ロンドンで一番「細い」家の存在を確認できるのは、ダークブルーの外壁だけだ。

 ロンドン西部シェパーズブッシュ(Shepherd's Bush)にある地下1階、地上4階建ての家は、最も狭いところで幅1.6メートルしかないが、現在95万ポンド(約1億4000万円)で売りに出されている。

 英国の住宅の平均価格が25万6000ポンド(約3800万円)であることを考えると法外だが、ロンドンの不動産市場では常識的な範囲だ。

 この家の売買を扱う不動産会社ウィンクワース(Winkworth)のデービッド・マイヤーズ(David Myers)氏は、「ロンドンの歴史のユニークな一部」としてそれだけの価値があると語った。「ロンドンのちょっとした魔法です」

 19世紀末期から20世紀初頭のものとみられる建物はもともと、上層階の倉庫や住居を兼ねたビクトリア朝風の帽子店だった。

 家の中で最も狭いのは、地下の端のキッチンだ。台所から約2倍の幅のダイニングにつながり、食卓に面しているフランス窓の向こうには幅約4.8メートルの庭がある。

 店舗があった1階は、かつてそうだったように今も受付となっている。2階は1階とほぼ同じ大きさで寝室と書斎があり、ロンドン西部の街並みを一望できるテラスもある。バスルームとシャワールームのある3階から主寝室のある4階へは、らせん階段で上る。

 作り付けのベッドが置かれている主寝室には、昇降用のハッチから出入りする。ハッチはスペース節約のために、床から開く仕組みになっている。

 マイヤーズ氏によれば、アールデコとその他の折衷主義のデザインがまじり合った「ユニーク」な時代的特徴を持つ建物で、アート志向の買い手にお勧めだという。(c)AFP/Callum PATON