【2月11日 東方新報】中国人にとって1年で最も大事な春節(Lunar New Year、旧正月)が近づいている。例年なら春節連休中に若者が故郷に帰って家族と過ごすものだが、新型コロナウイルスのため移動の規制や自粛が続いている。そこで今年は、離れた親と子が互いを気遣うプレゼントをしたり、オンラインで新年のあいさつや宴会をしたりなど、新しい形で家族の絆を保っている。

 春節前の時期は通常、デパートやスーパーなどが派手に「年貨(春節の飾り物や食品、贈答品)」商戦を展開する。新型コロナの再流行を警戒して今年はオンラインセールを中心にしようと、商務省の呼びかけで大手インターネットサイトが合同で1月20日から「全国ネット年貨セール」を始めた。最大のオンラインモール「天猫(Tmall)」では、「親へのプレゼント」「親への紅包(お年玉)」「親の健康」という検索キーワードが通常の4倍に達した。

 売れ行きが数倍となったのが、オーブンや食洗機、製麺機、お掃除ロボットなど、親の家事の負担を軽減する家電製品。コロナ禍で親の健康を気遣い、防寒下着や電動歯ブラシ、マッサージチェア、さらに高齢者向け健康診断クーポンなどの売れ行きも大幅に増えた。セールで買い物をしている6割以上が1990年生まれ以降の若者という。

 オンライン業者は「故郷に帰るにもPCR検査を受ける必要があり、地域によっては地元で隔離期間もある。現実的に帰郷は難しい中、せめてプレゼントで親への感謝を伝えようとしている若者が多い」と説明する。

 一方で、高齢者層では携帯電話のプリペイドカードの購入が増えている。日ごろは週に1回程度、子どもに電話をかけていた親が春節を控え、「家の大掃除はした? 春節の準備は進んでる?」「大みそかはどんな食事を作るんだい?」と毎日のように電話をかけているという。

 物流プラットフォーム大手「菜鳥網絡(Cainiao Network)」によると、地方都市や農村部から大都市へ送られる小包が今年に入り20%増加した。福建省(Fujian)のお茶や湖北省(Hubei)の熱乾麺、雲南省(Yunnan)の果物、貴州省(Guizhou)の白ワインなどが北京や上海などに送られている。実家に帰ってこられない都会の子どものため、せめて「ふるさとの味」を届けようとする親の姿が目に浮かぶ。

 通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)と大手火鍋チェーン「海底撈(Haidilao)」は今月1日から「リモート火鍋」サービスの予約受け付けを始めた。11~17日の春節連休中、ファーウェイの提供する高品質ディスプレーとビデオ会話を通じて、離れた家族が一緒に火鍋を味わうサービスだ。

 アンケートによると、ほとんどの市民が中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」などを使ったビデオ通話で「離れた家族と新年のあいさつをする」と答えている。大切な家族への思いやりが、分断を図ろうとする見えないウイルスを乗り越えている。(c)東方新報/AFPBB News