【2月12日 東方新報】中国・海南航空(Hainan Airlines)を中核とする複合企業の海航集団(HNA Group)がついに経営破綻した。急激な拡大路線が裏目に出て資金繰りが悪化し、昨年に公的管理下に置かれたが、新型コロナウイルスの流行が追い打ちとなった。借入金を元手に買収を繰り返す「爆買い」戦略が破綻し、コロナ禍における最大規模の経営破綻となった。

 海南航空は1993年に海南省(Hainan)の省都・海口市(Haikou)-北京間の就航から営業を開始。地方航空会社を次々と買収しながら路線を拡大し、中国国際航空(Air China、エアチャイナ)など3大大手に次ぐ業界第4位に発展した。2000年には海航集団を設立し、不動産、金融サービス、観光、物流などを含む多数の業界に進出。買収した海外資産は400億ドル(約4兆2048億円)に上り、ヒルトン・ワールドワイド(Hilton Worldwide)の株式25%、ドイツ銀行(Deutsche Bank)の株式10%を占める筆頭株主にもなった。

 買収の元手は借金だった。海航集団創始者の陳峰(Chen Feng)会長は中国の銀行から借り入れが難しくなると、著名投資家のジョージ・ソロス(George Soros)氏を口説き落として出資させた。借金で資産を買いあさる手法は「『買え買え買え』の陳氏」「クレージー陳」などと言われたが、陳氏本人は「中国で海航集団の資本モデルを理解できる人はいない」と意に介さなかった。2017年末時点のグループ総資産は1兆2300億元(約20兆円)に達していた。

 しかしその後、身の丈を超えた拡大戦略に限界が生じる。海外企業の合併・買収(M&A)を積極的に繰り返していた中国企業を対象に、中国政府が金融機関の与信リスク管理の監督を強化すると、海航集団は貸し渋りや貸しはがしで一気に資金繰りに窮した。

 陳氏は次々に資産を売却し、今度は「『売れ売れ売れ』の陳氏」と揶揄(やゆ)されるように。それでも2019年6月末時点の総負債は7067億元(約11兆5006億円)に膨れ、負債比率は72%に達した。業界では「実際の財務は開示された数字よりはるかに深刻」と指摘された。

 陳氏は2019年末、新年に向けたメッセージとして「2020年はわが社が長年戦ってきた流動性問題との闘いに勝利する年になる」と強気の姿勢を崩さなかった。しかし海南省政府は2020年2月末、海航集団を管理下に置いた。本業の航空事業に力を入れようとしたが、コロナ禍による路線激減により立て直しは図れなかった。

 そして今年1月29日、海航集団は債務が返済できなくなったため、債権者が海南省の裁判所に破産と再建を申し立てたと発表された。海航集団は「法に基づき裁判所に協力し、債務処理を積極的に推進し、債権者の権利利益を保護してまいります」と声明を出したが、陳氏でなく海航集団党書記の顧剛(Gu Gang)氏の名前で発表された。中国メディアは「陳氏が表舞台から姿を消す」「一つの時代の終焉(しゅうえん)」と報じている。(c)東方新報/AFPBB News