【2月9日 AFP】インド北部で7日に発生した氷河崩壊による川の氾濫で、これまでに26人の死亡が確認され、170人以上が行方不明になっている。トンネルに閉じ込められたものの生還した作業員の一人、ラジェーシュ・クマール(Rajesh Kumar)さん(28)が当時の様子を語った。

 氾濫した水が水力発電所をのみ込んだ時、クマールさんと同僚らはトンネルに入って300メートルほどのところで作業をしていた。クマールさんは病院のベッドで、「助かるとは思わなかった」とAFPに語った。

「突然、口笛のような音がして…人が叫ぶ声が聞こえて、私たちに外に出ろと言っていた。火事だと思った。私たちは走り始めたが、水が流れ込んできた。ハリウッド映画みたいだった」

 作業員らはトンネル内に組まれた足場の棒に4時間にわたりしがみつき、水とがれきから頭が出るようにして、互いを励ましあった。「私たちはひたすら互いに言い続けた。──何があっても棒を離してはいけない、と。私たちの手が離れなかったことを神に感謝する」とクマールさんは言った。

 氾濫した水が谷を下るにつれ、トンネル内の水は引き始めた。しかし後には高さ1.5メートルを超えるがれきと泥が残された。「私たちは砕けた岩を乗り越えてどうにかしてトンネルの入り口にたどり着いた」とクマールさん。

 クマールさんたちは小さな開口部を見つけた。どこにつながっているのかは分からなかったが、空気の流れだけは感じることができた。やがて光が差し込んでいるのを見つけて、作業員の一人の電話がつながり、助けを求めた。

 クマールさんたちが地面に開いた小さな穴から外へ引き出されるシーンは感動的だった。太陽の光を見て喜び、宙に向かってこぶしを突き出す人もいれば、そのまま担架で搬送される人もいた。両手を上げて、顔から泥に突っ伏す人もいた。

 数時間にわたる厳しい試練だったにもかかわらず、クマールさんたちは奇跡的に軽傷のみでトンネルから脱出することができた。

 映像前半は災害発生時の様子、7日撮影・提供。後半は生還した作業員らの証言。8日撮影・一部提供。(c)AFP/Jalees Andrabi and Aishwarya Kumar in Kochi