【2月8日 AFP】中国で人気になっていた、米国発の招待制の音声チャット交流アプリ「クラブハウス(Clubhouse)」が8日夜、当局によって利用を禁止されたとみられる。「万里のファイアウオール(Great Firewall)」と呼ばれる検閲システムを回避し、タブーとされる話題についても議論を交わすことができる、中国では珍しいアプリだった。

 クラブハウスでは、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)における大規模な強制収容や香港の民主化デモ、台湾の独立といったテーマも採り上げられ、ユーザーらはオンライン上の「部屋」での会話に耳を傾けたり、参加したりすることができていた。しかしそれもつかの間、やはり検閲対象になったものとみられる。

 ある会話を聞いたというジャーナリストのイザベル・ニウ(Isabelle Niu)氏は7日、「中国本土在住の若い女性が、『本物のインターネットに接したのは初めて』と語っていた」とツイッター(Twitter)に投稿していた。

 同アプリは招待制とはいえ、1日当たり数百万人が利用する人気の「淘宝(タオバオ、Taobao)」をはじめ、複数の通販サイトで会員招待券が10〜100元(約160〜1600円)で売買されており、実際には他のユーザーからの招待を受けずに利用している人もいた。

 中国情報を発信する「シニカ・ポッドキャスト(Sinica Podcast)」を運営する郭怡広(Kaiser Kuo)氏は7日、クラブハウスでのウイグル問題をめぐる議論の内容を、リアルタイムでツイッターに投稿。

 郭氏によるとこの「部屋」では、中国で多数を占める漢人と、ウイグル人のユーザーらが交流。自身が漢人であることに罪悪感を覚え、涙声になった女性ユーザーに対し、ウイグル人の男性ユーザーが「この残虐行為があるからこそ、友情がさらに大切になる」と答える場面もあったという。

 また独首都ベルリンを拠点に活動するジャーナリスト、メリッサ・チャン(Melissa Chan)氏も、ある台湾人が開き、中国語話者4000人が参加する「部屋」で、ウイグル人や漢人らが「監視態勢や新疆の再教育施設」から世間話まで、多岐にわたるテーマで語り合っていたと、同じくツイッターで報告していた。(c)AFP