■光の力で航行?

 オウムアムアを間近にとらえた写真は存在しない。観測された特異性に適合する形状には、葉巻のような細長い形と、パンケーキのように平らで丸く薄い形があるが、ローブ氏はシミュレーション結果ではパンケーキ形が支持されていると指摘。恒星の光を受けて推進力を得るソーラーセイル(太陽帆)として、意図的に作られた物体だと考えている。

 さらに、オウムアムアは太陽と遭遇するまで、近傍の恒星に対して「静止している」統計的にまれな状態だった。宇宙空間を高速で移動していたというより、むしろ「オウムアムアの視点」から見れば、われわれの太陽系がぶつかってきた格好だ。

「おそらく、オウムアムアは広大な宇宙にただようブイのようなものだった」とローブ氏は書いている。

 天体物理学者イーサン・シーゲル(Ethan Siegel)氏は、米誌フォーブス(Forbes)への寄稿でローブ氏を批判。「かつては尊敬を集めた科学者」だったが、自説で科学界を納得させることに失敗したため大衆に迎合するようになったと評した。

 ローブ氏は、地動説を唱えて罰されたガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)と同じく、正説に疑義を呈した者を非難する学術界の「いじめ文化」だと抗議した。

 暗黒物質(ダークマター)や多元的宇宙(マルチバース)の追究といった理論物理学の推論に比べれば、地球外生命の探索のほうがはるかに常識に近いとローブ氏は主張。天文学の新分野として、地球外生命体の生物学的・技術的な痕跡を探す「宇宙考古学」を提唱している。

「開発に100万年かかった技術の証拠が見つかれば、手っ取り早くそれらの技術を獲得して地球上で使えるようになる」とローブ氏。人類が気候変動から核紛争までさまざまな脅威に直面する中で、そうした発見が「同じチームの一員だという意識を私たちにもたらす」可能性があると言う。

「国家間で頻繁にやっているように戦うのではなく、協力し合うことができるかもしれない」とローブ氏は語った。(c)AFP/Issam AHMED