【2月7日 AFP】エジプト・ナイル川(Nile River)のきらめく水上を進むレトロな蒸気船。クルーズ船としての初航海から1世紀以上たつが、「スーダン号(SS Sudan)」で旅を楽しむ観光客は英国の「ミステリーの女王」アガサ・クリスティ(Agatha Christie)の影響で今も絶えない。コロナ禍でも予約は順調だ。

 スーダン号は、1885年にエジプトの王家のために建造され、1921年にクルーズ船となった。クリスティは1933年、2番目の夫で考古学者のマックス・マローワン(Max Mallowan)氏と共にスーダン号に乗船した。4年後に「ナイルに死す(Death on the Nile)」を書き上げている。

 主人公はクリスティ作品でおなじみのベルギー人名探偵エルキュール・ポアロ(Hercule Poirot)で、ナイル川のクルーズ中に起きた殺人事件を解き明かす。

「この蒸気船の旅の雰囲気、ルートに着想」を得て、クリスティはこの作品を執筆し始めたのだとスーダン号の責任者、アミル・アティア(Amir Attia)氏は言う。

■「クリスティの船室」は2年の予約待ち

 23の船室とスイートルームがあり、なかでも一番人気なのは、クリスティが使った部屋だ。現在のツアーでも、クリスティがたどったのと同じ遺跡をめぐる。当時と違うのは、船の動力源が石炭ではなく、ディーゼルエンジンと太陽光発電であることだ。

 老舗のホテル2か所での宿泊を含む8日間の豪華クルーズの費用は、1人約4000ドル(約42万円)だが、クリスティの船室に泊まる予約は最長「2年待ち」だとアティア氏は言う。

 エジプトの主要産業である観光は、新型コロナウイルスの感染拡大による制限で2020〜2021シーズンは前期の5分の4以下の収入となっているが、スーダン号のスタッフは強気だ。

「売り物としてユニークですから」とアティア氏。「旅行先として、エジプトの人気が廃れることはありません」

 昨年当初は港で足止めされたが、制限が解除されると、スーダン号は他のクルーズ船に先駆け、10月に営業を再開した。「すぐに予約でいっぱいになり、オーバーブッキングで何件か断りました」