■公式メディアの穴を埋める

 ムスタドラフさんは2019年にチャンネルを開設し、これまでに1300万ビューを獲得した。

 しばしば刑務所内の過密状態や看守の腐敗について語り、収監中の人権侵害や「疑惑の」死亡事故に警鐘を鳴らしている。生き残るためには「拷問や不正に耐えなければならない」と言う。

 刑務当局の広報担当者はAFPの質問に対し、「こうしたユーチューブチャンネルやそこで語られているうそ」について警告した。受刑者の家族から苦情があれば、「細心の注意を払って」調査を行っていると述べた。

 だが、モロッコの刑務所の状況は逼迫(ひっぱく)している。受刑者のための人権擁護NGO「モロッコ刑務所監視団(Moroccan Observatory of Prisons)」は、2019年には全国の収容者数が8万6000人を超え、施設によっては収容率が定員の2.5倍を超えていたと訴える。

 殺人罪で20年服役し、2020年に出所した元ボクサー、モハメド・ベンタズ(Mohamed Bentazout)さん(57)は「元受刑者の証言が、公式メディアが触れない穴を埋める」と語った。

 彼は無実を訴え続け、事件の再審を求めている。ユーチューブを使い、「モロッコ国内と世界中の視聴者」に自分の訴えを発信しているという。自分に対する「明らかな不正」に抗議するため、監房を模して自宅のテラスに建てた小さな部屋に暮らす。そして汚名をそそぐまで、そこから出ないと誓っている。(c)AFP/Kaouthar OUDRHIRI