【2月2日 AFP】ミャンマー国軍が1日、現政権の事実上のトップであるアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問やウィン・ミン(Win Myint)大統領らの身柄を拘束し、ミン・アウン・フライン(Min Aung Hlaing)国軍総司令官(64)が「立法、行政、司法」の全権を掌握した。数か月後に定年を迎える予定の総司令官は、民政移管の実現を手柄にしていたが、昨年11月の総選挙でスー・チー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)に国軍系政党が大敗すると、態度を一変させた。

 ミン・アウン・フライン氏は、2017年にミャンマーに無国籍の状態で住むイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)への残虐な弾圧を指揮したとして国際的に非難を浴び、国連(UN)の調査団からは、軍の高官らと共に「ジェノサイド(大量虐殺)」の罪で訴追勧告の対象とされている。

 だが同氏は、人権侵害に関するほぼすべての申し立てを真っ向から否定し続け、約75万人のロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに避難する事態に至らしめた軍事行動は、反政府勢力を一掃するにはやむを得ない措置だったと述べている。

 国軍総司令官に指名されたのは2011年。上の世代の軍指導部が、数十年続いた軍事政権から議会制の民政への移行を進めていた時期だ。

 今年、定年退職の年齢の65歳になるが、それ以降の自身の政治的野心もほのめかしてきた。

「ミン・アウン・フライン氏は文民として出馬することに興味を示していた」と、豪シンクタンク、ローウィー研究所(Lowy Institute)のアナリストでミャンマー問題に詳しいハーベ・ラメイユ(Herve Lemahieu)氏は指摘。おそらく、国軍系政党の後押しで要職に就く道を思い描いていたのだろうと言う。だが、昨年11月の総選挙ではNLDが圧勝した。

 ミン・アウン・フライン氏は投票前には選挙結果を尊重すると約束していたが、先週に入ってから、ミャンマーの政治の停滞を解消できなければ、憲法は「廃止」されるべきとの考えを示し、緊張が一気に高まっていた。(c)AFP